【週末投稿】つれづれ有用植物#127(クスノキ科ニッケイ属:クスノキ)
クスノキ科の植物は、香りや実を古くから利用してきました。
今回ご紹介するクスノキの他に、葉をお線香の原料とするタブノキ、実を利用するアボカド、樹皮を香辛料として利用するシナモン(セイロンニッケイ)などがあります。
クスノキは常緑広葉樹で、日本では主に関東地方南部以西から本州の太平洋側、四国、九州・沖縄に広く見られ、特に九州に多く分布しています。
寺や神社の境内や日本各地にクスノキが植林されてきましたが、「合成樟脳」(後述)ができるようになってからは、植林樹が放置されて野生化しているそうです。
樹高は 8 ~ 25m ほどになり、幹回りが3 m以上になる巨木が多い様です。
生長スピードは速く、大きなものは高さ30 m以上、目通りの幹周囲22 m以上、樹齢約800年という巨樹になる個体もあるそうです。
花期は 4 ~ 6月で新緑の枝先にあまり目立たない花を咲かせます。果実は直径1 cmほどの球形の液果で、はじめは淡緑色であるが、8 ~ 9月ごろに黒紫色に熟します。同じクスノキ科のアボカドに近い味がするそうですよ。
面白い事に、クスノキの葉には共生させる「特定のダニ」を飼っています」。1枚の葉に入り口の大きいものと小さい2つの「ダニ室」が作られており、入り口の大きい方にはケボソナガヒシダニという捕食性のダニが住み込んでおり、これがクスノキの葉を害する植食性のダニを捕食することでクスノキを守っていると考えられています。他方で入り口の小さい方には植食性のフシダニの一種が生息しています。これはもちろんクスノキから栄養を吸収するものの、それ以上の害を与えることはないそうです。
楠の木片を水蒸気蒸留で抽出し結晶化させたものをカンフルといい、日本では「樟脳(しょうのう)」ともいわれます。樟脳は防虫効果や、局所血行促進作用、鎮痛作用、鎮痒作用を持っているので、タンスに入れて虫食いを予防したり、メ〇ソレータムの原料に利用されたり、楠油などのエッセンシャルオイルとしてロマテラピーの素材としても利用されています。
【ビルマの 楠油】
天然樟脳は、かつて専売品として国益の一翼を担うほどの産業でしたが、安価な合成防虫剤(合成樟脳)の普及や需要の減少などから、現在生産しているのは数社のみとなっている大変貴重なものです。
樟脳は樹木を原料に水蒸気蒸留法という手法で製造され、製造工程で「天然樟脳」、樟脳油(エッセンシャルオイル)、芳香蒸留水(ハーバルウォーター)が採れます。この樟脳油の中に樟脳成分が含まれており、結晶化したものをゆっくりと時間をかけて脱水、脱油して製品となるそうです。
■「天然樟脳(しょうのう)」をご紹介します(6分くらい)
ふくおかインターネットテレビ 様
飛鳥時代には仏像の材に使われ、今でも優良素材として利用されています。刃通りがよく、適度な硬さで木目も邪魔せず彫刻材として最良なのだそうです。芳香性があって腐りにくい性質と粘りもあるので欠けにくく、細かい仕事に向いているそうです。しかし水分が抜けにくく、上手く乾燥させないと反ったり割れる恐れがある様です。
最後に、他の植物でも樟脳に近い効果を持っている植物があります。
竜脳樹(フタバガキ科)という植物からも採れます。
白色板状結晶で古くから薫香、墨の香料、香粧品、せっけん香料に使用されている様です。樟脳と比較すると揮発性は少ない様です。