歌人へのプチ★しるべ       『岡井隆の百首』大辻隆弘(2023)  ふらんす堂

言わずと知れた前衛短歌の三巨頭(塚本邦雄・寺山修司・岡井隆)のひとりである。戦後短歌の牽引者、現代思想を歌に詠み込んだ先駆者、前衛短歌の理論的構築の礎を創った歌人、評論や詩作も手掛ける多才な人、等々これらは岡井隆を評することばであり、私たちの持つイメージである。ことばは権威を作りだし人間を神格化させる。が、真のところ、岡井隆とは一体何者なのか。一言でいえば、向こう見ずなチャレンジャーだとわたしは思う。保守と評されながらも革新であり、歌のスタイルも時代の変化に応じてくるくると変化させていく。変わることにまったく躊躇がない。だからこそ岡井はことばの海を自由に泳ぎ回り、新たな大陸に辿り着いたのだと信じて疑わない。岡井の生き方そのものがチャレンジの連続であり、その先々に何が待っているのかを怖れることなく突き進んでいったのだ。その危うい無謀さにわたしは人間的な魅力を感じ、ひどく惹かれるのである。

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