歌詞の話 共感・共通の経験で歌詞を好きになる


「盛り上がりたいあなたへ おすすめの邦楽10曲」

「恋愛中のあなたへ おすすめの洋楽5曲」


音楽を探すとき、こんなタイトルを見たことがある人は多いでしょう。


なぜ音楽を聴くのか……その理由の一つとして挙げられるのが"共感"なのだと思います。楽しい曲を聴けば楽しくなり、悲しい曲を聴けば悲しくなる。悲恋の曲を聴けば、悲恋の経験がある人はそれを思い出し、応援ソングを聞けば元気が出る。そんな風に、音楽を聴くことは聞き手の聴覚だけでなく、記憶や感情にも影響を与えます。


具体的に例を挙げながら話をします。                 歌詞全部は書きませんので、全部をみたいという方は自分で調べてください。


まずはadoの"うっせぇわ"。                     この曲は反抗心、反発心の塊のような歌詞です。理解されない痛みや苦しみ、現状への疑問や不満などをぶちまけています。結構棘のある言葉で書かれていますが、この曲が流行ったのはみんな心の中ではこんなことを思っていたから……つまりこの曲に共感しているからなのだと思います。作者の言いたいことがしっかり伝わっているのかはともかく、不平不満を零し、今のままが嫌だと思っているのは、みんな同じで、誰もが経験することではないでしょうか。メロディも強烈でありながら分かりやすく、誰もが口ずさめるような曲なのも流行った一因なのかもしれません。


松任谷由実の"中央フリーウェイ"。                  この曲の歌詞はそのまんま、道を通った時に見える景色、思ったこと、思い出が書かれています。                       「調布基地を追い越し、山に向かって行けば、右に見える競馬場、左はビール工場」というドライブをしている最中に見える景色、「片手で持つハンドル、片手で肩を抱いて愛してるって言っても聞こえない 風が強くて」、「初めて会った頃は毎日ドライブしたのに このごろはちょっと冷たいね 送りもせずに」                           とドライブに行ったことがある人だけじゃなく、元カレ・元カノとの思い出で、「こんなことした、こんな風に冷めてった」と共感できます。                  


スキマスイッチの"ガラナ"。                       告白しようとする人の心情を歌った歌です。情熱的でありながら、ところどころの詩的な表現が対比となっていて、また、基本的に話し言葉で書かれていて印象的な曲です。恋をしたことがある人なら、一度は経験あるであろう出来事がたくさん書かれています。                  「“要は有言実行”…出来るなら苦労はしねぇ」や「二の足を踏んでちゃ無理だって脳ミソでは解っているのだ」という葛藤は、恋愛としてだけじゃなく、チャレンジしようとする人でも共感できる歌詞になっていると思います。              


映画やドラマ、それからアニメのタイアップ。もしくはキャラソンでも同じです。タイアップやキャラソンはその映像作品の伝えたいこと、もしくは登場人物の思考や行動をもとに作られたものが多くあります。物語を通して私たちはその登場人物の経験を知ります。そして曲を聴いたときに、「あ、この部分は作中のこの言葉が入ってるんだ」とか、「ここはあの登場人物の生き様や考え方だ」と分かるわけです。

これも例を挙げながら話します。


宇多田ヒカルの"あなた"。映画『DESTINY鎌倉物語』のエンディングで流れたこの曲は全体を通して、一途な愛情が表現されています。一方、この鎌倉物語は鬼のいる黄泉の国に連れていかれてしまった妻を連れ戻すために冥界下りをするというストーリーになっています。映画を見て、最後にこれが流れたときは正直泣いてしまったという自分語りはともかく、ここでは詳しい歌詞の話は省きますが、"あなた"との何気なくも愛しい大事な日々を取り戻すために黄泉へと向かう主人公の思いが見えます。勿論、これはストーリーと繋げると、になります。本来の"あなた"という存在はパートナーだけでなく、家族だったりもするでしょう。ただ映画を通してみたときに、主人公にとっての奥さんがどれだけ大事な人物かが映像と音楽で伝わると同時に共感できるようになります。そして自分に置き換えて、自分にとっての"あなた"について考えるきっかけにもなるわけです。


アニメ『青春ブタ野郎はバニーガールの夢をみない』のエンディング曲であり、出演声優が歌っている"不可思議のカルテ"。                                           キャラソンとはその登場人物のための楽曲なので、そのキャラクターの性格、思想、行動がより顕著に描かれます。この曲も登場人物…その中のヒロインについての楽曲になります。ラノベやアニメを見ない状態でこの曲を聴くと、恐らくなんのことか分からのではないかと思います。       この作品は登場人物達が思春期症候群という架空の病気、もしくは現象に悩まされ、それを解決するために奔走するという内容です。歌詞の中の"嘘も現実もどっちも真実だったの" や "語れない眠れないトロイメライ"というのが登場人物達の経験であることが分かり、「ここは作中でいうとこことリンクする」という箇所が見つかります。これはラノベやらアニメを見ることで、登場人物に起こった出来事や思いを知っているからです。 自分が経験がなくても、登場人物を通して共感できているのです。



こんな風に曲を好きになる理由の一つには共感というものがあるのだと思います。恋愛ソングや応援ソングが多くの人に好まれる理由はここにあるのかなと思います。歌詞をどう書こうか悩みのある人は、自分の体験談や他人の経験をもとに書いてみてもいいと思います。



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