君は考えすぎて不幸なんだよ…
昔の彼女と久しぶりに話をした。
彼女は今僕のことをどう思ってるのだろうか。
『ある会社の新規立ち上げ事業に参加しなかと誘いがあるの』
という話を聞いてなんだか心がチクッとした。
『好きな事をして人生を送るのが一番だよ』
そう返すのが精一杯だった。彼女は僕がいなくてもやっていけるし僕にはない仕事の誘いもあってなんだか少し妬ましくも思った。
そんな僕の気持ちを知ってか知らずか彼女は
『好きな事はあるけれどそれでは食べていけない。努力が足りないのもわかるけど圧倒的才能に触れるとそれすら辛くなる。ただそれがあるから下を向かずに歩いて行けるとは思ってる』
といった。オファーがこの時期あるだけでもありがたい話なのに……そう思うと腹立たしくなった。
すると彼女が映画の話をし始めた。
『この前見た映画にまたハードルを下げるの?そしてここがまた幸せだって思って生きていくの?このセリフがとても心に響いたの』
そういった。彼女が僕の機嫌を察してか話を変えたことが疎ましかった。勝者の余裕。そのうえまるで僕がまるで幸せのハードルを下げてるとでも言いたいのだろうか。
『俺はハードルを下げることが不幸だとは思わない。今が幸せだと思えるかどうかだ』
イライラしたので少し感情的に言い返してしまった。うすうす気づいていたけれど見ないようにしていたものを見られたような気がして居心地が悪い。
『向上心はもっと幸せになりたいから生まれるの。幸せの位置はそれぞれだけど……ただ今回は何より表現力が素晴らしい』
彼女はそういった。この子の話はいつもこじれてる。そんなに色々考えたところで人生何も変わりはしないのに色々考えてああでもないこうでもないと。そんなに考えたところで世界は変わらないし目の前の幸せは見つけられない。
『考えすぎはマイナス。今を楽しめればそれでいいと思うよ』
僕がそう言うと彼女はあきらめたような表情で別の話を始めた。
考えすぎたところで何も変わらない。目の前の幸せに気付き続ける事が幸せでい続けられる方法なんだ。それを彼女はハードルを下げたというのかもしれない。でもそれで幸せが続くならそれでいいじゃないか。色々考えたところで人生が変わるわけでもないしやりたいことが出来るわけでもない。なにもかわらない事に時間を費やすなんてそんなの面倒くさい。そう自分に言い聞かした。
本当は悔しかったんだ。俺がハードルを下げて目の前の幸せを見てる事実。そして彼女にくるオファーは俺には来ない事。彼女がこの会話で言い負かせると気づいてから話を変えたその余裕。すべてが悔しかったんだとは心の底ではわかっている。でもそれを認めると幸せは逃げていく。俺は幸せでいたいのだ。
そして彼女はいつも考えすぎて不幸だ