私がおひとりさまをする理由

仕事が終わりお腹が減っているわけじゃないのに誰かと話したくて飲みに出る。同僚や友達とではない。1人で飲みに出る。いわゆるおひとりさま。
会社の同僚や友達と喋りたいわけじゃない。私にはあまり関わりの深くない接点ができるだけ少ない人と話をしたいのだ。


お酒を飲みたいわけじゃないしお腹がすいたわけでもないのにまるで食べ飲みしたかったような顔をしその時間を過ごす。

『やっぱり仕事終わりはこれがないとね』

なんていいながらこれという言葉は、この雰囲気と会話にかかっている。周りの常連さんや店主達に君は頑張ってるよと無条件に褒められたくてそして誰かを無条件に褒めたくて飲みに行く。その褒めには何の責任もなくて曖昧で少し無責任なその関係は心地いい。
ちょっと酔っ払ってまだ話したくて名残惜しいけどこれ以上食べることも飲むこともできなくて仕方なく『お会計を……』と言う。

帰る道すがらにダイエット中なのにと思いながらせめてこの時間後悔をしないようにと空元気で歌を歌ったりする。
家に着いて服を脱いでパジャマに着替えとりあえず寝る。少しだけ食べたことと飲んだことの後悔をしながら。

翌朝4時に目が覚める。

あーなんで食べちゃったんだ。あーなんで飲んじゃったんだ。体重は増える一方。でもその分責任のない大丈夫だよ君は頑張ってるよと言う言葉でストレスは軽くなる。
それでもこの翌日の朝4時なんで食べちゃったんだの後悔は止まらない。

もうこれ以上眠れない。
そう思って気分転換にお風呂を入れる。少し熱めのお湯にちょっと高めの入浴剤をたっぷり入れて湯船につかる。少し歌なんて歌ったりして落ちてゆくテンションを無理やり上げる。昨日の後悔をこそぎ取るようにゆっくりじっくりと身体を洗い流す。
風呂上がりバスタオルを巻いて昨日の食べてしまった後悔を気休め程度に紛らわす為たっぷりの水と一緒に下剤を飲む。

『あーなんだかお腹がすいた』そう思いながら近所のファミレスへ向かう。朝はそれでも日本人の血が騒ぐのでご飯粒が食べたい。豚汁定食を頼んで日本人であることを再認識する。

そして落ち着いて窓の外に走る車を見ながら1日が始まるのを感じる。

そうやって我慢できない寂しさは翌日の後悔とセットにしながらどうにかやり過ごしながらまた昨日の続きの1日が始まるのだ。

私がおひとりさまをする理由。責任のない優しさを感じたいから。

#エッセイ #日々のこと

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