ドラマ「龍が如く」、結構すきだよ(ネタバレ無し)+後編感想
前がき
・はじめに
もしこれから観る、という方へ。
1話序盤でめっちゃ観るのやめたくなっても、あと15分我慢してください。
まず、これだけ……。
期待しないなりに興味があって観たらかなり好みだった!という雑な感想文です。ネットだとあまりに否定的な意見が目立つので、好きだったところは記録しておこうと思いました(ファンの方々がボロカス言いたくなるのもよくわかったが、それについては後述)。
また大事な点として、私自身は龍が如くをプレイしたことがないというのが挙げられます。ゲーム実況で作品を“観た”ひとりでしかありません。好きなキャラクターがいたり、作品について考え楽しんだりしていても、熱心な作品ファンやプレイヤーの方々のように時間を費やした体験に基づく強い愛着のようなものは無いと言えます。だからこそ気軽に観て「悪くないんじゃない」と言える部分もあると思います。
決して、ゲームをプレイしていないにも関わらず原作と比較して解説するような文章ではありません。さらに、ドラマの内容についても時系列や要素を並べて丁寧に考察するような文章ではありません。
そういった前提の元で書かれた一個人の感想である事を心に留めて読んでくださると幸いです。
ゲームの内容については0、1(極)-7外伝までを知っている状態です。酷評の量が凄かったので前半は原作ファンからの低評価の理由を考えてみました。その後は私が好きだった部分を好きなように沢山書きます。
・一応ドラマについて概要
アマプラで配信が開始した「完全オリジナルストーリー」のドラマ。あらすじとか俳優陣はリンク先読んでください。
全6話で、10月25日に1〜3話、11月1日に6話までが配信される。だからこの文章は前半3話までの感想です。
(11/5追記……後半も観て最後に感想を追加しました。)
原作ファンに向けて
できる限り簡単に、色々心配な原作ファンに向けて(おそらく地雷になりうるな)という要素を書いてみる。
・桐生一馬に「格」が感じられないのは許せない人は、観なくていい
桐生に限らずメインキャラは皆、ビジュアルに加え内面や基本的な設定が大きく改変されている。ドラマ桐生は「桐生一馬」を想定すると意味わからないくらい違う。不器用な男には違いないとは思うけど、ドラマ桐生は「これから」の男という印象。
ハッキリ言って桐生を取り巻くキャラで印象的な人々はみんなもれなく格が落ちている。錦山はむしろ出来るヤツになりすぎてる所もあったけど。個人的には生々しさに振った結果だと感じて面白かったんだけど、これも後述。
・キャラクターの「舞台装置」化
キャラクターの改変は激しいどころの騒ぎじゃない。メインキャラはじめ、原作にいるキャラのキャラデザが大きく改変されている。ドラマの設定に合わせて一から作り直したような感じで、そもそも寄せる気があんまり無いんだろうと思った。竹内涼真が桐生っぽくなさすぎるって話もまずある。
キャラの名前を宛てがわれているキャラたち、と捉えた。だから「その名前だけどドラマではモブ」みたいな扱いのキャラがそこそこいる。ここが格落ち問題に繋がっている気がする。
舞台装置化と言うのは、冴島なんかが顕著だと思う。「真島と共に登場する兄弟分」という要素しか残っていない。まだ3話なので後半動き出す可能性はなくはないが、容姿からして冴島らしさは皆無に近い。正直これだけ好意的に捉えようとしている私としても一瞬「これ冴島って本気で言ってんのか?」と思った。だから「バランス的に真島の横にバディ的な感じでいる男を配置したよ、全然違うけど名前は冴島から借りたわ」くらいの感じでつけられたのだと解釈しておかないと納得しようがない。
・雰囲気すら原作と全然違う
ここまで書いて、じゃあ雰囲気だけでも似てたりするのか?と言われると、そんなこともない。ドラマにもセレナ、ミレニアムタワー、地下闘技場などが登場するが、ゲームとは全然違う。特にセレナに関しては店自体を取り巻く設定が全く違うので、これも登場人物の改変と同様「名前と役割が同じだけの別物」となっている。
・私が思う、この作品がボロカス言われた理由
大きくわけて2つ、改変の仕方と、宣伝の仕方。
まず改変については言わずもがなだと思う。個人的には面白いとも感じられた点だが、その上でやっぱり原作ファンの「好き」を逆撫でするアレンジが多かったのではないかと思う。桐生一馬にあんな情けねえ事言わせんな、あんな事させんな、風間のおやっさんとの関係をああするな、と。私も思うもん。
みんなが好きなところを思い切って変えてみた結果、みんなが「これさえあれば面白く見れる」と思う軸をブッ壊しちゃった感じ。
次に宣伝の仕方について。話題になった、「堂島の龍になりたい」とか。言うかよ桐生が!何言ってんだお前!?と……。私も思ったし。
問題のコレ、ドラマみるとすぐわかるので言うけど「ドラマでは既に“堂島の龍”という絶対的伝説が存在している」ことを踏まえなきゃダメなセリフである。勿論それだけではあの桐生がそんな言い方するとは思えないので、ドラマ桐生について付け足さなければならない。「これを言ったドラマ桐生(過去回想)は、ヤクザへの憧れを抱えた未熟で自分勝手で世間知らずな若い青年だった」と。
このセリフをデカデカと打ち出したが故に、「ダメだコリャ」になっちゃった感じがある。じゃあ何かいいのかあるかって言われると困るんですけど……。公式としては「そう、桐生はそんな事言わない、だからドラマはゲームとは違いますよ」というのを示したかったのかもしれない。視聴した上でそう考えるとかなりしっくりするが、ファンの地雷を踏み抜いた感は否めない。
だから寧ろ、これ新規の人は先入観無しに「違うもの」として見れて楽しいんじゃないかと思う。Switchの極から入る新規向け、と考えるのが収まり良いかも。または数あるメディアミックスの中のチャレンジングな1作。
実写化に不安があって、キャラクターと作品の世界を大切にしてる人ほど視聴は慎重になるべきなのは間違いないと思う。
Xで横山Pがこんなコメントを出していました。
ドラマ観てからこのコメントを見つけて読んだのだが、いろいろ納得がいった。「同じ作品の元で新しいものが作りたい」制作陣と「新しいながら同じ良さを感じさせてくれるものが観たい」ファン達とのすれ違いは決定的なものだったようである。正直「何を求められてるかわかってない、新しいものを作るにしても良さを生かしきれてない、制作者側のエゴでしかないじゃん!」と思うのも、ある。でもこういうすれ違いは大きなコンテンツでよく見られることだし、得意でないと感じた人はそれでいいと思う。だって違いすぎるもん。ただ、この作品から龍が如くに関心を持って好きになるような人が一人でもいるなら良いんじゃないでしょうか。
私自身はプレイヤーですらなく、お金をたくさん使えるほどの熱量も無いので龍のオタクと名乗れないと思っている。だから他人事みたいに龍ドラマを観れていると思う。でも面倒なオタクとして長いので、公式から出されたものが受け入れがたかった時の怒りや悲しみ、公式での好きなキャラクターの雑ともとれる扱いに感じる不安、そう言うのはめちゃくちゃわかる。中学生の頃から好きなジョジョの実写映画(岸辺露伴じゃない方)は怖くて観れていないし、好きなゲームで大好きなキャラがめちゃくちゃなギャグ堕ちさせられて放置喰らったのはトラウマだ。
Xを見ているとあんまり強い言葉の悪口が流れてきてちょっと悲しくなる、原作を知っててもいいと思った人間もいるぜ!と言うことで以下、好きなところを書き殴っていきます。
ドラマ龍が如くで好きだったところ
さて遠回しに散々に書いたが、ドラマなりに「新しい龍が如く」という違うもの特有の面白さも沢山あった。
・「龍が如く」じゃなくていい、とは言えない
先に示しておきたいのは、「そんなに違うなら龍が如くじゃなくていいじゃん」とは言えないと感じたことだ。ドラマ桐生は(本来の)桐生一馬とは似てもないし異なる存在だが、彼はその名前を背負い、龍を背負い、憧れを見据えて堂島組に入り様々な出来事に巻き込まれていく。ドラマでは皆、それどころか舞台設定も何もかも、同じ名前で似た運命を背負った別物だと言える。つまりジョジョ6部でいう一巡後の世界である。これ伝わらない人にどう説明すればいいかわからない。ジョジョの奇妙な冒険1〜6部とスティールボールランの関係に近いとこもある。なんて言えばいいんですか?とにかく、同じ名前を背負った存在の違いにこそ味を感じた。ドラマ桐生の人となりが良い例だ。
・ドラマの桐生
ドラマ桐生ははっきり言って桐生(以下ゲームでの桐生のこと)のような格が感じられない。特に95年軸や回想の中での若いドラマ桐生は、自分勝手で未熟さを強く感じさせる。朴訥な雰囲気も無く、ヤクザになりたての頃なんか錦山とイキりまくって街を歩き、ヤクザの代紋に怯えたチンピラ見て爆笑したりする。そんなくだらない普通さを残す青年が、その重さも知らず「堂島の龍」を口にしてしまう。そうして変わってしまった時代と友を前に大きな策謀、過酷な運命に巻き込まれていく。ここに生じる曇らせというか残酷さは、原作と異なるドラマ特有の味になっていると思う。
ドラマ桐生はちらほら小物らしさがあって、背負う龍や「桐生一馬」に負けてる感じがあるが、それが私はけっこう好きだ。ゲーム桐生を知ってるからこそ「それに足る器のない未熟な青年」にしか見えないし、彼がこれから龍に至るにはどれだけの目にあうだろうとドキドキする。その名前と運命を背負わされている青年だからこそ、悲哀を予感させる。
よく考えると桐生の格好よさや潔さは怖いくらいなので、ドラマのは現実臭さがあると言えるのかもしれない。まあロマンがない、桐生一馬としての良さが掻き消えてるとも言う。
戦い方も桐生より必死こいた感じが強い。ただ2005年軸での戦い方に関しては強者の風格をうまく演出しているし、ゲームオマージュも感じられる。
・空気感
空気感!興味本位でトレーラーを観たとき、ゲーム内ムービーとは全く異なる雰囲気ながら画面に醸し出される夜の街が刺さった。時代の空気感や画面の雰囲気自体に惹かれて観始めたので、正直なところ中身が面白くても酷くてもどうでも良かったのだが、真面目に結構面白かったのでコレを書いている。
背景は全体的に規模感をリアルにしつつ小汚くしてあって、私は大変好みだった。龍が如くはグラフィックがリアルなりにゲームだからこそ成り立ってる“変さ”とカッコ良さのバランスがあると思うのだが、それをぐっとリアルに寄せるために、ゲームの空気を現実に再現するというよりも生々しさ特化型にした感じ。だから安っぽさはそんなに感じられず、劇場作品っぽいコントラストの効いた画面がより平成の匂いを強めてくれていたような印象。
・その他キャラたち
ドラマ錦が、良かったんですよ。賀来賢人さん演じる錦山。いやこれがね!案外錦山なんです、違うけど錦山。私にはそう見えた。
1995年での、なんとか必死こいてヤクザなった頃の必死感、ヤクザになれたのが嬉しくて肩切って歩くイキりっぷり、桐生より上に丁寧に振る舞える所とか。2005年でのすっかり悪人面になってボスらしくなった冷淡な雰囲気とか。よかった。正直ドラマ錦山めっちゃ好きだわ。桐生がドラマ桐生なので絡み方とか関係性もいろいろ違うが、そんな中で要所要所で原作のキャラクターを感じられた。
由美まわりはガチで設定がいろいろ違うので、由美自体もキャラクターとしてホントに別物なんだが、これ私好き。俳優さんが以前から顔立ちや雰囲気に惹かれて(特撮俳優以外よく知らない)私がわざわざメモした方で……。山口百恵的なアンニュイな雰囲気を纏った、影のある表情の似合う人で。絵になるんだよなあ。最初こそ不安げとはいえ明るいミホにつられて穏やかだった彼女が、次第に孤独感を募らせギラギラしていく様、たまらなかった。桐生一馬とは合わなそうな女だけど、ゲーム桐生と合わせて考えてしっくりくる存在。
ミホ、錦の妹。錦の妹が普通に登場して桐生たちと一緒にいるのも妙な感じするんだが、これが良かったんです。純真で強かでそれゆえの危うさがある。彼女は由美を励まし桐生と錦に明るく声をかけ、よく笑う良い子。若いどころかまだあどけなさが残り、どう考えても夜の街にいるにはそぐわない。そのアンバランスさをグロいと思うし、彼女が“錦山の妹”である以上、なんとなく彼女の辿る運命が見える。彼女が神室町での日々に存在していたからこそ、桐生たちの友情にかかる影は色濃くなるし、これはドラマだけの旨味だ。
真島にも触れなくてはならない。かっこよかったよ!ビックリしました。本来の真島よりも静かで得体の知れなさが強い。喧嘩好き感もあるにはあるけど全体的に大人しくて淡々としている。冴島にはビビったけど、後編での活躍でなんか多少取り返してくれるかもしれないので、言い切らないでおこう。
・好きなとこ色々
ざっくり箇条書きで。
・ファッションや雰囲気の平成初期らしさの中に令和っぽいテイストが混ざっているような感じがしてオシャレ
・喧嘩に華がある!!
・原作知ってるから話はわかる、をブッ壊してくる読めない展開
・時間軸を激しく前後させつつ過去(1995)と現在(2005)で変わってしまった桐生たちを重ね合わせる演出(これは観にくいって意見もわかる。気抜くと今何年の話してるかわからなくなる)
・夜の街の品のなさ、ギラつき
・あっそのキャラも出すんだ!んでそう言うことにするんだ!という驚き
・2005年錦がかっこいい(かっこいい)
・Damedane
正直これめっちゃ嬉しかった。ドラマ観た後だと、ドラマ桐生があまりにカラオケとか行ってるテンションじゃなさすぎたから余計面白い。ドラマ桐生(現在)、あまりに表情も暗いしテンションも低いしカラオケもポケサーもキャバも行きたくなさそうなんだけど、桐生なんだし行ってほしいよな。後編で行くシーンあったら爆笑する。ドラマ自体は原作に合わせる気なさそうなのに本家カラオケムービー再現はあるのはなんなんだよ。
面白かったよ!
期待してなかったし何なら観るつもりもなかったのに、あっ良い!と思えて楽しかった。時間軸を前後する構成ゆえに、原作で序盤の鍵になっているシーンが未だに明かされていないので、普通にストーリーも気になる。後半配信がたのしみです。後編ふまえてまた感想を書くなり追記するなりできたらいいな。
もしこれから観る、という方がいた時のためもう一度書きます。1話序盤でめっちゃみるのやめようかなと思っても、あと15分我慢してください。できたら1話最後まで観てから切るか判断してください。とはいえ、やっぱ無理だわ……と思ったら容赦なく切った方が良いです。こう言うのは相性があるし、無駄に嫌になったり怒ったりする必要はないからです。自戒も込めて。
長々と思ったことだけ好き勝手書きましたが、これが「そう思った人もいたのか」「じゃあ観ようかな」に多少繋がることがあれば嬉しいなあ、とか思います。終わり!
以下ネタバレ有
・6話まで観ての感想(11/5追記)
観ましたよ〜全話!!面白かった!!!!感想の前に、SNSで貰った質問を。
Q. ストーリー破綻してない?
A. 時系列を洗い出して厳密に探したら、破綻と言える部分はもしかしたら見つかるかもしれない、と思います。細かい分析や考証をしながら観ている訳では無いので、私個人は破綻だと感じた部分はありませんでした。時間軸が激しく切り替わる上、劇中で描かれない期間を補完する描写が少なく、端的に言ってわかりにくいのは事実です。
というのが、一旦の答えです。
如何せん記憶力が弱いもんで、1個1個の整合性とかどうとか正直わかんねーわ、原作ゲームもやってない、ながら見のオタクの感想をアテにすんな!
真面目にぎっちり書く気力が残ってないので、取り急ぎざっくりと書かせてもらいます。バリバリネタバレがあります。
・「原作を知っているからこそ先が見えない」の加速が凄かった。結末に向けての流れもその結末も、やられた……。100億の扱いがアイコというキャラクターと「新宿の悪魔」の存在で何もかも変わった感じ、面白かった。
・家族の絆。よく見たらドラマのキャッチコピーは「全ての絆が、傷になる。」らしい。イヤな事言うじゃん……とはいえまさに、と言っていい内容だった。絆と言うには温もりを失いつつある、愛と言うには優しくない、切っても切れない呪いのような「家族」の繋がり。血の繋がりは関係ない、目を背けても共に過ごし支えあった時間が目を背けることを許さない。だから、みんな傷ついていく。でもその最後に残った「死なないで欲しい」の美しいこと……。
・遥が物語の中心に巻き込まれないのは寂しいといえば寂しいけど、小さい子が辛そうなのはしんどいからね。これも良し。ドラマ遥があんまりふてぶてしくてワガママなクソガキで爆笑してしまった。私はかなり好きだったんだけど、再現とか原作の面影を求めている人にはしんどかったと思う。でもあの遥よかったな。何が良かったって「アイコの娘」として完璧だもの!ドラマ遥はあくまでアイコの娘だから、可愛いけどワガママだし声も態度もデカいし言うこと聞かない。お母さんそっくりじゃん。でもお母さんからの手紙を見て小さなリュック1つで飛び出していく真っ直ぐさ、すごく好きだ。
・アイコ……ああいうキャラ、好きなんだよな……。めっっちゃ嫌な女なのはわかるし、あんなの身内にいたら「いっそ死んでくれたら」って思うのも当然である。でもあの清々しいまでのわかりやすいクズっぷり、態度の悪さ品の無さ!彼女の纏う退廃的でどこか恐ろしい雰囲気が好きだった。それでいて、自身は母親の入水を目の前で見たトラウマがあるにも関わらず、母になるために(妊娠中にタバコとやってんのも最悪だったが)金集めて(この方法も最低だったが)ちゃんと産んでワガママ言えるような子には育ててる。妹のことも、思っている。アイコと由美もまた、「家族」だったんだよな。絆とか愛とか綺麗な言葉では言い表せない繋がり。
・ドラマ桐生、と呼んでたけども、すみません。ドラマの桐生は「一馬」と呼びたい。原作桐生のことをそう呼んだ人々のことを思うとあまり名前で呼ぶ気になれないのだが、ドラマの桐生一馬は、一馬……と思う。前半感想でも書いたが、若き日のドラマ桐生は若いと言うより未熟で良くも悪くも普通の男だった。「親殺し」を被ってムショ出てからも、家族と絆とかつての夢を昔のようにどこかで信じてしまっている。一馬……お前……。(わかりにくいので感想文では今まで通り「ドラマ桐生」と書きます)
・ドラマの時系列をざっくり把握して考えると、ゲーム1作目のあらすじをベースにしていながら桐生自身に5とかの“夢”文脈も発生しているようにも見えた。親殺しに至るきっかけとも言えるミホと桐生の賭け試合の話では、桐生の夢が軸になっていた。「堂島の龍」という桐生の夢、由美と錦とミホの夢。意図的なのかはわからないが、由美のセリフとかミホの存在はすごく効いてた印象。夢連呼されると嫌でも5の夢ラッシュ思い出すじゃん。
・ドラマ桐生自身がそんな夢を抱いている、というのも新鮮だが、飯のシーンやトレーニングのシーンがあるのが良かった。闘技場とかで闘ってることはあるが、桐生が地味なトレーニングしてるシーンってあまり見たことがない。95年、ミホの治療費と「堂島の龍」になる夢がかかった試合のあたりのトレーニングシーンとか良かった。あの辺は風間が休日のおじさんっぽかったのも良かった。飯で言うと05年、由美とアイコ捜索をする最中の中華屋でのシーン。「ここ、ここに、線が入ってる……(眉間にシワ出来てるぞ、そんな顔するなよの意)」という不器用すぎる上に意味を汲んでも今まさにしんどそうな人に言うことじゃなくてウケる。ここ好き。
・大筋わかってるからとミホの運命や錦山の苦悩については高を括ってたが、全然無理だった。桐生があの状況においては正攻法(実力で勝ち上がって金にする)を試みる中で、錦山が自分の身を削ってフラフラになりながら怪しい話に釣られていく対比も辛かった。ミホ、めっちゃ良かった……。健気で素直で強かで優しい子で……。錦の妹ではあるけど、桐生と由美の妹でもあるよね。彼女も家族だから。「お兄とずっと友達でいてあげてね」、家族を繋ぐ呪縛だったかもしれないが、あれがあったから桐生は最後まで錦山に手を伸ばせたんだろうとも思う。
・由美も錦山も、原作のキャラクターと比較すると違う点はキリがないけども、やっぱり原作よりちょっとメンタル弱そうで好きだった。これは前編感想でも書いた「人物像の生々しさ」要素なので個人的に加点要素。弱そうって、あんな事になれば誰だって参ると思うけども、05年由美の“もう限界”っぷりは凄いものがあった。
・桐生たち家族の良さを痛感したのは、桐生が試合に勝ってしまってミホの所に戻ったシーン。顔を歪めて苦しげに泣くドラマ桐生とその手を握る由美を見て、彼らは家族なんだと思った。思ったし、この4人の繋がりがドラマの良さだと思った。
・桐生と錦山の関係、凄かった。スゴいスゴいってそればっかになってしまうが、圧倒された。原作から2人の関係には重たく苦しい絆があったが、ドラマの風味も大変良かった。「どうして救うんだよ、殺してくれよ、壊させてくれよ」の錦山と、「お前がお前である以上俺たちは家族だ、生きろ」の桐生。もう壊れてしまいたい人と、それさえも救おうと手を伸ばせてしまう人。最後、錦山を抱えてゆっくり光へと進む桐生の絵よ。
・観ながら書いてた鑑賞メモが出てきました。オタク・ポエムだけど折角なので以下に載せておきます。
「悪魔になろうが、俺はお前を死なせない」
「だったら俺はどうすりゃいいんだよ」
死ぬ勇気もなく、踏みにじって傷つけて他にどうすることもできなくて、必死に這い上がってきた。桐生の背で龍は今や虚しく輝く
・錦も由美も「全部お前のせいだろ」「一馬がヤクザになんかならなかったら」とか言う。酷いように思えるが、彼らの苦しみを思えば言いたくなるのもわかる。錦はともかく由美は……そもそも桐生の「堂島の龍」の夢(ヤクザの金盗み)計画に巻き込まれてセレナ行きになったんだから言う権利はあるっちゃあるし……そうだよな?自分の手元に残る事実が受け入れ難く、事の中心にいる桐生に押し付けなければやっていけない。桐生はそれを理解していて受け止める。このあたりドラマ桐生の桐生一馬っぽい所だと思う。受け止められてしまうほど強い。普通の人間なら折れてしまうところで呆然とせず行動できてしまう。その異質さ。桐生の持つタフさを、周りのキャラクターとの差で相対的に見せられた気がした。
・錦が親殺しを果たし、それを桐生が被ったところ。その時自体は日中だが、現在(05年)の錦山に重なることで暗い部屋に雷鳴が轟く。その雷鳴と、「殺っちまった」顔の錦山が静かに振り向くシーン。ここは原作リスペクトを感じた。アツい。
・騙されたと知って出ていった錦山を追おうとする桐生を、由美が引き止めるところ。「誰も殺さないって約束して、必ず戻ってきて」と彼女は言った。でも、これ……言いたかったのは……「1人にしないで」じゃない!?錦山を恐ろしいと思った、拒絶した、でもこれ以上酷い事になんてなってほしくない。独りよがりな感情を押さえ込んで、桐生に託すしかなかったように見えた。姉は職場を荒らして金持って消えて、妹のような子は助からず亡くなって、昔からの付き合いのその兄は荒れた挙句自分を女として求めるような素振りを見せる上に殺しでもしかねない。自分の傍にあったものがあっという間に崩壊して不安で寂しくて怖かった。それを押し殺して桐生を送り出したから、その後声を上げて泣き崩れるしかなかった。
・「グッド・バイ・マイ・ラブ」。泣き崩れた由美の悲痛な声からゆっくり重なってくる、甘いバラード。この演出痺れたなーッ!好きだ。ゆったりした穏やかな曲だから、この悲劇が嫌に際立つ。切ない別れの歌だ。「あなたは右に、私は左に 振り向いたら負けよ」。進む道が分かたれた決定的な日に「忘れないわ」と歌う曲を重ねてくる残酷さが好きだ。忘れようもない傷になって残るのに。
・前半感想では触れなかったが、挿入歌でいうと「Mr. Blue Sky」もあったな。グッド・バイ・マイ・ラブといい、70年代の曲で揃えてるのは何なんだ。私は世代では無いので、90年代当時これらの曲がどんな扱いだったのかわからない。知らない世代的には格好ついてて好きだった。
・伊達さんもちゃんと動き出したら全然原作と似ても似つかない存在で面白かった。大きい組織2つぶつけてできる限りヤクザ殺そうとしてて笑う。桐生への対応も、好感度上がるイベント全て潰したみたいな関係値で面白い。口ぶりからして錦山が「悪魔」だとだいたい分かっていて悪魔狩りをさせたようなので、桐生をうまく使った感じらしい。多分ホントにヤクザ嫌いなんだな……。
・ドラマ錦山、桐生がムショ入ってからめちゃくちゃ頑張ったんだろうね。ナイフ裁きとか。
・堂島の龍の真実、そうくるか〜それか〜と膝を打ってしまった。「堂島の龍」の伝説は先にありながら、結果的に「風間の背中を追ってヤクザになった」のはそのままということになる。
・ドラマ由美、カッコよかった。郷田会長に頭下げた所もそうだし、最後金持ってきたところもそうだし。あれは決して殺し合ってるヤクザの集団前にビビってないのではなく、もうそうするしかない、という人間の出す圧や覇気のようなものだったと思う。カッコいいけど、やっぱりずっと限界そうというか、過去の苦しみに苛まれ続けている。その弱さを押さえ込んで必死に立っている、そういう強さが感じられて好きだ。
・思ったより人が生きている!!これもいいな。新訳Zガンダムを観たときと似た気持ちを思い出した。
・いや、やっぱりこれ、面白かったです。なんなら、好きな作品。とはいえ正直、龍が如く知らなかったら観る気にならなかったと思う。如く知らない人に推せるくらいドラマとして単体で面白い!とは言い難い。メインキャラの俳優さんのファンであれば是非、といった感じだ。
・そしてやはり、これは龍が如くだったと思う。実写化と言うとどうしても「再現」を求められる世の中で、この作品ももれなく酷評されている。一端のオタクとして、原作と似た見た目、見た目が似ていなくても空気感や視聴者に与えられる感覚が「再現」されるのを求める側でいることもあったので批判意見はわかるつもりだ。許せなくなるのも、酷い言葉で罵りたくなる気持ちも知っているはずだ。
ただ、嫌いだと思う権利は誰にでもあれど、作品を否定してゴミのように言って駄作の烙印を押すには早くすぎるだろ!!!!と思う。ドラマとして間違いなく面白かった。私は楽しんで夢中で観たし、原作と比較した上でさらに楽しめた。この見方をしている人は間違いなく他にも沢山いるはずで、酷評の波の中に消えているだけだと思っている。
だからと言って、嫌いだと感じた人に無理に楽しんで欲しいとは言えない。前半の話でも書いたが、こういうのは相性だ。公式が出したものとはいえ許せないことは、コンテンツを追いかけていると往々にしてあることだ。許せなかった人は、どうか「まあ作品の幅を広げるためにどうにか新しい事やりたかったのかな〜失敗してるけど。」くらいに思って無視してほしい。……と、個人的には願う。ボロカス言いたくなる気持ちはわかるもん。それをオープンな場所で言って共感してくれる人と分かちあってやっと、許せないなりに怒りが落ち着いたりすることもある。
でも……私は……好きだったから、こんだけ書いておきました。他にもドラマを楽しんだ方がいれば、スキなりXの反応なりでそっと伝えてくれると私の心が救われます。
のちのち推敲できそうなら少し手を入れたいと思います。大変な長文となりましたが、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。