日記#12 『判断と猶予』

バイト先の人たちに、僕が全く恋愛をしてこなかったという話をして、何日後かにその人たちとシフトが被ることがあった。その人たちには小説を書いてあることも打ち明けていて、その日も小説の話をしていた。彼らは僕がどんなジャンルの物語を書いているのか冷やかし半分で尋ねてきた。僕はジャンルとかそういうものって読んでくれた第三者が決めるものだと思っている。小説には様々な要素が詰まっていて、それらを吟味し読者によって決められていくものなのだと思う。
僕は恋愛要素が多い小説と答えると彼らは笑った。「恋愛してきてないやつが恋愛小説書くの」って。
僕はなんだか悲しくなった。物事を一面的にしか捉えられない人達だ。恋愛してきていないからと言って、なんで恋愛小説を書くことを笑われないといけないのだろう。してきていない人だって書くだろ。ミステリー作家は今まで殺人現場に出くわしていたのか。いたたまれない気持ちを何とか抑えてその場を凌いだ。前も話したけど、こういう人たちを見返したい。僕を笑ったやつを唖然とさせたい。小説を書くには経験が必要だ。けれどそれと同等くらいに創造だって必要だ。僕に経験は少ないかもしれないけど、それを補えるほどの独創性があれば問題ないはずだ。なんて本当はただ腹が立っているだけだ。馬鹿にされたことにイライラしているだけだ。

僕に残された猶予は短い。結果を出さなきゃいけない。小説家になれなきゃ僕は冴えない大人でしかない。くだらない仕事を毎日こなし、くだらない日々を徒に消化するだけの人間になってしまう。嫌だった。僕は最近、後ろを見てはうじうしと何かを考えるばかりだ。そろそろ前を見なきゃならない。前は真っ暗で、一歩間違えたら崩れてしまうかもしれないけれど、過去を見て文句垂れてる大人にはなりたくない。いい加減目を覚まさなきゃならない。本気になって努力している人を見て、ああ凄いなと思っているだけの生活じゃあダメだ。

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