Phrase Plus 3 『在宅ディズニーランド』
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そういえばいつからだっけ、ディズニーランドが閉園になったのは。
新しく開発された、わざわざディズニーランドに行かずとも楽しめる、「在宅ディズニーランド」が開発されて、もう間もなくしてだったか。
ディズニーランドを家で楽しむことなんて不可能だ。アトラクションやそこででしか食べることのできない料理、ショーなどは仮想現実で見るだけではつまらない。そう言われて開発されたのが、「在宅ディズニーランド」なのだ。名前だけ言われたってなんのことやらさっぱりかもしれないが、簡単に言えば睡眠導入剤だ。カプセル型の錠剤で、それを飲むと一気に睡魔が襲う。そして必ず夢を見るのだ。ディズニーランドに行く夢を。かなり正確な明晰夢で、アトラクションや食事は現実のように体験できる。お金のない若者がこぞって購入し、あっという間に波及していった。ディズニーランドの客足は激減し、潰れてしまった。潰れてしまったというよりは、無意味になったといった方がいいかもしれない。
夢の国は、本当に夢でしか体験できないものとなった。
誰もが寝る前に、一錠飲んで、ディズニーランドを楽しんでから朝目覚める。これが在宅ディズニーランドだ。
世間には知られてはいないが、副作用がある。依存性と夢と現実の混合だ。事実、年々薬の売上は伸びていき、今では二人に一人が毎日飲んでいる状態だ。それと共に無差別殺人事件を筆頭に重軽罪問わず、犯罪の増加が著しくなった。大抵は「夢だと思っていた」と言っている。
平和な国と言われていた日本は、今では護身用の武器を持っていなければ外を出歩けないほどになってしまった。この間も池袋放火事件が起き、20名の死者、30名の重傷者が出た。犯人は夢なら何しても許されるんだと笑っていたという。
明らかに薬のせいだ。しかし薬はなくならないし、禁止にもならない。政府関係者も服用しているからかもしれない。
誰がこの地獄を止めるのだろう。もしかしてこれも夢だろうか。
今日もまた一錠、水と共に飲み込んだ。
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