
星の船(お話し)
とても遠くにある星なので、地球に住んでいる人には見えないかもしれません。
生まれたばかりの小さな星。
その小さな星の名前は キラ と星神さまが名づけてくださいました。
キラの隣りに ピカ という少しお兄さんの星がありました。
ピカは、ひとりぼっちて寂しく思っていたので、嬉しくてなりません。
早速、小さな星に話しかけます。
「ぼくはピカ、君は?」
「キラ」
それから2人は仲良く、いろんな話をしました。まあ、少しお兄さんのピカがキラの質問に答えるという事が多かったですけどね。
ある日の事です。
ピカはキラに、こんな話をしました。
「もうじき星祭りの日が来るよ、楽しみだなあ」
「なあに?星祭りって?」
「星神さまが星の船に、星の子供達を乗せてくださるんだよ」
「そうか、その時だけ僕達動けるんだね」
「そうさ、一年に一度だけのお楽しみ」
「星の船に乗ってどこに行くの?」
キラは尋ねます。
「ぼくも君と同じで、今年が初めてなんだ」
「星の船の事、誰に聞いたの?」
「流れ星だよ。時々話しをしてくれるけど、同じ流れ星は二度と来ない。
きっと素敵な場所に行ったんだね」
「そうなんだ、流れ星さんに僕も会いたいな」
頷きながら、ピカは言います。
「星神さまが星の船に乗って、星の子供達を迎えに来てくださるそうだよ」
星神さまと星の子供達と一緒に、星の船に乗ってどこに行くのでしょう。
キラとピカの胸は弾みます。
そして指折り数えた星祭りの日がやって来ました。
二人は星の船を、今か今かと待ちわびていました。
ところが、なかなか星の船は現れません。どうしたのでしょうか。
何度も何度も二人は顔を見合わせます。何度も何度も二人はため息をつきます。
その時、やって来た者がいます。
白い鳥。
「あ、星の使い鳥だ」
ピカが声をあげました。
「ピカ、キラ、星神さまの伝言だよ」
「星神さまは来てくださらないの?」
ピカも、キラも星祭りが中止になったのだと思い、涙がこぼれそうになりました。
「大変な事が起きたんだよ。星の船に最初に乗った子が、ハシャギ過ぎて船から落ちたんだよ。二人落ちて、一人は見つけられたんだけど、もう一人の子が行方不明になったんだ」
ピカとキラはビックリ。
二人も探しに行きたいと思うのですが、星神さまと一緒でなければ動く事が出来ないのです。
その時、声がしました。
今度は青い色の使い鳥です。
「落ちた星の子が見つかったよー、もうすぐ星の船が来るよー」
使い鳥も嬉しそうに、大声で知らせます。
「わーい、わーい、星の船に乗れるんだ!」キラとピカも大声です。
「ほらほら、見えてきましたよ」
2羽の使い鳥が羽を大きく広げます。
星の子ども達が、手を振っているのがだんだん大きくなってきました。
みんなみんな笑顔です。
キラとピカも負けない程ニコニコ顔です。
船の上から星神さまがキラとピカを抱き上げてくれました。
とても優しいダッコでした。
「私はお前たちの、お父さんでもお母さんでもあるんだよ」
星神様にこのまま抱かれていたいと、キラとピカは思いました。
「さあ、皆んな、出港だよ」
星神さまの優しくて力強い声が響きます。
キラとピカも他の星の子達と輪になりました。初めて会うのですが、ずっと前からの友達のように、すぐに皆んなとお喋りをしたり、歌を歌ったりしました。
その間にも、星の船は進みます。
星祭りなので、星々は普段よりも美しく輝いているようです。
流れ星達も、ダンスをしながら北へ南へ、そして西へ東へと流れていきます。様々な美しい色の尾をひきながら。
なんと美しい夜空でしょう。
なんと素敵な瞬きでしょう。
星達の歌声もウットリする程心地よいのです。
「星神さま、僕達はどこにいくの」
「人間の子ども達の夢の中だよ。私達の星祭りを今、人間の子ども達も夢の中で見ているんだよ」
星神さまが、歌い始めました。
とても優しい声で、とても不思議な言葉で。
星の子ども達には、意味がわかりませんでしたが。穏やかな安らぎの中で静かに目を閉じました。
その星神さまの歌声は人間の子ども達の耳にも届いていました。
星の子ども達も人間の子ども達も今、同じ夢を見ているのかもしれません。
星の船は静かな夜の川を進んで行きます。そろそろ帰路につくのでしょうか。船が大きな弧を描き始めました。
星の子ども達も人間の子ども達にも、穏やかで、平和な毎日が送れるように、星神さまは祈り続けておられます。
世界が平和でありますように。
昨日も、今日も、そして明日もと。
🎵星めぐりの歌
作詞作曲:宮沢賢治
あかいめだまの さそり
ひろげた鷲(わし)の つばさ
あをいめだまの 小いぬ、
ひかりのへびの とぐろ。
オリオンは高く うたひ
つゆとしもとを おとす、
アンドロメダの くもは
さかなのくちの かたち。
大ぐまのあしを きたに
五つのばした ところ。
小熊のひたいの うへは
そらのめぐりの めあて。