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初心者向け漫画tips:視線誘導について



視線誘導とは?


読みやすい漫画のポイント」の話を前回しました。

今回はそこで紹介した、下記の①〜③のポイントを説明します。

①セリフは内枠線内にいれる。読み手の視線が散らないように。
②セリフを左から右に読まさない。
③フォントサイズを安定させる。

①〜③はすべて、「視線誘導を意識する」に繋がります。
視線誘導とは、読者が漫画を読むときに、
わざわざ漫画の読み順を意識することなく、
描き手の想定する順に、視点が移動するようにさせること、です。

視線誘導がわかりづらいと、漫画がスムーズに読めず、
結果、わかりにくさに気づきます。
視線誘導は、様々なコツがありますが、
初心者の方には、まずは「フキダシ」の見直しが簡単でかつ効果的です。

読みにくさに気づいてみよう

さて、こちらのマンガを読んでください。

赤字修正>まちがった例 2-01

どうでしょう。「なんか読みにくいな」って、思いませんか?

でも、読めなくはないのですよね。私は絵が全く描けないタイプの編集なので、絵はなくフキダシだけ配置していますが、絵があれば「読めなくはない」程度までになると思います。この漫画の「読みにくさ」はスルーされるかもしれません。でも、これが16P続いていたらどうでしょう? ちょっとやだな、と思いませんか?
ちょっと読みにくいが、読めてしまう。読めてしまうからこそ、直せないままになってしまう。いろんな人の漫画を添削しましたが、「絵がうまいのに読みにくい人」って本当に、たくさんいました。

「読みにくい」に気づくこと。

それがあなたの漫画を一歩前進させるコツです。

実践! 改善ポイント

まあ御託はさておき、実際になにが悪かったのでしょうか?
赤字をいれてみました。

再_ままなおし

冒頭に書いたポイントごとにみていきましょう。

①セリフは内枠線内にいれる。


最初の「これは良くないマンガの例〜」というフキダシ内のセリフが、内枠をはみ出ています。フキダシははみ出てもいいのですが、セリフは内枠のなかに入れてください。
内枠の外は、画像上ではあまり気にならないのですが、見開きで確認したり紙媒体で確認すると、結構「端」なのです。今回は原稿の塗り足しまで表示していますが、実際には仕上がり線で断ち切れるため、思っているよりもさらに、端っこにあるのです。
これが何が読みづらいかというと、読者の視点の移動が激しいのです。例えば、漫画で次のページを開くとき、最初に目を移動させるのは右上ですが、そこまで端っこじゃありません。さらに、今回は右上のフキダシだけですが、これが全部セリフが内枠の外まであったら、セリフがすごく「散ってる」ようにみえます。視線の移動距離が長く、読みづらい、に繋がります。

②セリフを左から右に読まさない。


2コマ目の「ーー普通に読めるからこそ」のフキダシのあとの次、視線はどこに移動しましたか? 「しかし少なくとも5つある」の真ん中のモノローグに移動した人と、「5つ!?」に移動した人、2パターンあると思います。前者は、2コマのモノローグの近くにあった「しかし少なくとも5つある」から読んだ人。後者は、「漫画は右から左に読むのが普通」だから、自然とそのように読んでいる人です。(この画像は極端なので、おそらく前者の方が多いとは思います)
この、「2パターンの可能性がある」のが問題で、フキダシの順は確実に1パターンで読ませるようにしてください。「どっちから読むだろう」と思わせないようにすることが大事です。
今回は「普通に読めるからこそ」のあと「しかし少なくとも…」の順で読ませたいと思っているのですが、実はこれが読み手に負担を強いています。2コマ目の「普通に読めるからこそ」から移動してきた目線は、「左から右」に移動しています。ですが、日本人は縦書きの文字を「右から左」に読みますよね。左からきた目線なのに、モノローグの中の文字は右から左に読ませる。これが非常に読みづらいのです。

2〜3コマ目は極端な例ですが、一番右下のコマにも同じことが起こっています。左上から右下へ読む形になっていますね。上記はともかく、これくらいならやってしまっている方、多いのではないでしょうか?

フキダシは、右から左に読ませる。これを意識するだけでも、かなり変わってきます。

③フォントサイズを安定させる。


これはそのままです。フキダシに合わせてフォントサイズをすべて変える必要はありません。いちいちフォントサイズが変わると、目が落ち着かず、読みにくいです。
私たち漫画編集者は、大体、「漫画の写植指定」という作業をしています。漫画家さんの用意したセリフ入りの原稿(ネームだったり下書きだったりする)に、サイズやフォントを指定していく作業です。で、「基本級数(=Q数)」というのが決まっています。
級数とはフォントのサイズのことですが、「この著者は18Q」という風に、基準にするサイズがあるのですね。基本的にはこのサイズで、重要な部分や叫ぶ部分など、要所だけQ数を変えています。

さて、上記を意識した状態の原稿を用意してみました。

正しい例

……普通になりましたね。

読みやすくはなっていると思います。でも……ひとつ目の方は「癖」みたいな、「勢い」的なものがあって、なんかちょっと面白そう感が画面から滲み出していたのですが、ふたつめは、整頓されて、おさまりのいいページにはなったものの、ちょっと、つまらない印象もあるかもしれません。落ち着いていますよね。
そう、ここまで説明しておいて、手のひら返し…というわけでもないのですが、ひとつめのほうを否定するわけでは全くありません。フキダシの位置は読みづらくとも、「絵とあわせると迫力があってイケてる」こともあります。

でも、今回は、この「落ちつきさ」の重要さを覚えておいてください。
今回は1ページだけピックアップしましたが、漫画は実際には何ページも続けて読むものです。その場合、一つ目のような癖の強いページがずっと続くと、読み手はしんどくなることがある。今回はそういうお話でした。

ではまた!

このnoteは、現役編集者の私が管理するマガジン「簡単にできる読みやすい漫画づくり」に掲載中です。漫画を描き始めたけどうまく描けない…という漫画作りの初心者の方に、「読みやすい漫画」のポイントをまとめています。ぜひこちらもフォローをお願いします。 ココナラにて、漫画添削も受付中です。

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