労働の歴史を振り返って
私は、現在、主にコンビニエンストアやガソリンスタンドの看板などを生産する工場に勤めている。自分の担当は、細かい組立や加工、梱包作業などの仕事だ。
なんと、高校卒業後、現在の会社に就職してから、今年で31年目になる。つまり、今の会社一本で、一度も転職をしたことがないのだ。そのことを話すと、周囲からは、
「一つの場所で長く勤めていて偉いね」
と評価されることが多い。しかし、自分としては、生活のために働いていたら、気付くとアラフィフになっていたというだけのことだ。自分の家庭が複雑だったため経済的にゆとりがなく、仕事の選り好みが出来なかったのである。
思い返すと、ブラック企業と呼ばれるほどの激務ではなかったが、何度もやめたくなるような苦労は勿論あった。
型にはまりすぎて理不尽な要求を頭ごなしに押さえつける上司、
自分には甘く、人には厳しくて、些細なことで八つ当たりする理不尽な先輩、
部署異動になったとき、初心者の状況を考えず、仕事の指導を充分にしてくれない人達、
多忙時に限って休んでしまう同僚、
空気を読まず、自己主張が強いパート達、
事務所の管理者の計画性がなく、段取りが悪いために余裕をもって仕事出来ない日々
こんな苦労はどこの職場でもあることなのだろう。今ではかなり改善されたが、当時は理不尽さと、段取りの悪さに怒りが頂点に達したことが、多々あった。疲れきって辞めてしまいたくなることなどしょっちゅうだった。
それでも、ここまで勤められたのは、自分勝手で、頭ごなしな人間がいても、極端に陰湿な人間がさほどいなかったせいもあるかも知れない。それに、中には話の分かる理解ある人もいたからだと思う。また、冷静に考えると、自分も思い込みや不注意でミスを犯し、多大な迷惑をかけたこともあるので、反省しなくてはいけないこともあるのだ。
私が仕事で大切にしていること。
自分も職場の仲間も、仕事しやすいように改善すること。
主に、間違いを犯したときのリスクを想定して、うっかりとしたミスや、思い込み作業をしない環境を作ること。
初心者に指導するときは、自分も初心に戻って細かく丁寧に説明すること。
まだまだ、しなくてはいけないことは、山ほど出てくるが、当然のことだが、それらのことをきちんと成し遂げるようにしている。
自分が働いてきた歴史を振り返ってみると、過去の状態より職場が改善されて進化していることも、かなりあるのだ。これは先に記した過去の苦労がエネルギーの源となり、改善意識が芽生え、皆で協力しあって努力してきた結果だと思っている。苦労と言っても世の中には更に上を行く辛さを味わっている方々は五万といるのだから、その人たちから見ると、自分はまだ恵まれている部分もあるだろう。
それに長く勤めたお陰で貯金もそれなりに出来たし、厚生年金もまあまあの金額が貰える可能性もある。(法律がかわらなければの話だが)
私が働いて笑顔になれるときというのは、心に余裕を持ったときに、長い歴史を振り返り、その中で得たものを見つけ出す瞬間であると思う。