一本の鉛筆
十年前に亡くなった夫がナイフで丁寧に削った鉛筆。
鉛筆はMITSU-BISHI uniの2Bと決まっていた。
一度に数本削り、ナレーション原稿を書く時もメモをつける時も、子供に手作りのドリルをつくる時も、この鉛筆。
これは映像の仕事についてからの習慣だったようだ。
必ず自分で丁寧に削る。
もう映像の仕事がなくなってからも、いつでも書き始められるようにきれいに削っていた。
夫が亡くなり殆どの物は処分したが、この鉛筆は捨てられなかった。
晩年「自分は映像作家では終わらない、小説を書いて直木賞をとる」って言ってたね。
遺稿が見つかりましたが、どうしたものやら。