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全国の書店員さん絶賛、柚月裕子さんの本

検事の死命

「われわれ弁護士の仕事は、あくまで依頼人の利益になるように弁護することです。ですが、弁護士も人間です。案件の中には、依頼人が明らかなクロで、反省の情もない、という場合も少なくない。
悲惨きわまりない被害者の実情を知ると、刑務所にぶち込んでやりたくなる、鬼畜のような奴もいます。でも、われわれの仕事は依頼人の利益を優先することです。職業倫理と実体的正義の狭間で、苦しむ弁護士は多いんです。

「検事の死命」業をおろす 132ページ


 二十数年前夫の運転する車で交通事故に遭いました。直線の幹線道路の交差点を青信号に従い直進していた私たちの車が、横から入ってきた車に追突され(勿論加害車輌から見る信号は赤信号のはず)、助手席に座っていた私は救急搬送。
 検査の結果、幸いに打撲だけということでタクシーで帰宅、大したことはなくその後2、3回受診しただけで完治。

 但し車は全損、相手の保険会社とのやり取りがうまくいかず紛争センターにまで持ち込まれました。
 センター室内の皆さんが裁判官のような口調でピリピリした雰囲気の中、相手の保険は弁護士つきということで本人不在、担当弁護士のみ出席。
 こちらは当時はやり始めていたインターネットで申し込めば保険料が少し安くなるというもので当然弁護士はつかず。
 担当者は来てくれましたが弁護士でない為入室できませんでした。

 こちらは青信号で進んでいたので落ち度はないはずなのに、交差点内の事故は双方に責任あり、ということをその立会弁護士に強く言われ、低い補償で納得させられました。

 部屋を出たところにその弁護士氏がいたので、「赤信号で出てきてぶつけた加害者の弁護をするのも大変なお仕事ですね」と思わず呟きました。 

 この本を読んでこんな昔のことを思い出しました。あの時の弁護士さんはどうしているでしょうか。

「陽世はあの事件をきっかけに変わりました。塞ぎ込み、何かじっと考え込むことが、多くなりました。酒の席で珍しく深酒し、弁護士を辞めたい、と漏らしたこともあります。

 「検事の死命」業をおろす 133ページ 
 


検事の本懐

検事である前に人として参考人と向き合い、相手の人権を尊重している。
それが、本来の捜査のあるべき姿だと思う。

「検事の本懐」

検事のバッジ
 「秋霜烈日(しゅうそうれつじつ)」
 紅色の旭日に菊の白い花弁と金色の葉があしらってあり、その形が霜と日   差しの組み合わせに似ていることから、厳正な検事の職務とその理想像とが相まって呼ばれているそうです。
 秋に降りる霜と夏の厳しい日差しのことで刑罰や志操の厳しさにたとえられているそうです。

弁護士のバッジ
 ひまわりは自由と正義を、天秤は公正と平等を象徴しているそうです。

ー秋霜烈日の白バッジを与えられている俺たちが、権力に屈したらどうなる。世の中は、いったい何を信じればいい。

「死命を決する」死命 公判部編338ページ(最終ページ) 

    どちらもなかなか自分の胸につける事のできないバッジですね。



「最後の証人」「臨床真理」

警察も検察も、犯罪者を真の罪で裁かせることが使命ではないか。同じ使命を持ちながら、なぜお互いが敵対するのか。

「最後の証人」公判初日 115ページ

あなたの卑劣な嘘でどれだけ彩さんが苦しんだか。あなたたち精神科医の診断がどれだけ患者にとって重いものなのか。あなたはわかっているの?医師の独断でつけられた病名を一生抱えて生きていかなければいけない人間の気持ちを、あなたは知っているの?

「臨床真理」353ページ

とても重いテーマで、私の腕では残念ながら読後感を上手く伝えられず、文中で見つけた作者の思いを引用させて頂きました。





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