小林猫太

しょおせつをかきます。かいたらあげます

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最近の記事

死ね死ね団がセンスある人材を求めているようです

 ※サムネ画像は何の関連もありません  都内某所地下。  壁一面サイケデリックな紋様に彩られた部屋に、これまた顔に奇怪な隈取りを描いた者たちが鋼鉄のテーブルを囲むように座っている。彼等はこれからハロウィンの渋谷に繰り出そうとしている集団なのであろうか。断じて違う。なぜならその眼差しは一様に真剣そのものであり、ともすれば痙攣のように細かく震える瞼には底知れぬほどの緊張と恐怖すら伺えるからである。そしてその視線は細長いテーブルの最奥に鎮座している、白髪と同じ色の口髭を蓄えた大き

    • 俺か、ローランドか

      【古賀コン6参加作品】 ★☆☆☆☆  古賀裕人1st.写真集『俺か、ローランドか』を発売日に購入しました。  もとより私は写真集が、特に人物写真集が好きです。一枚の写真は時に言葉よりも雄弁に被写体の真実を写し出します。切り取られた一瞬が、一瞬であるからこそ、連続した時間の中では見えなかったその人の精神世界を、細い切れ込みの隙間から垣間見えるようにして表出させてくれるのです。  そんなわけですから、今飛ぶ鳥も黙る勢いの才人、「才能がノーパンで歩いている」と評される古賀裕人の写

      • 小林寺三十六房

        ※古賀コン5参加作品 【これまでのあらすじ】  戦に明け暮れる日々に嫌気がさし、武士を捨て山あいの農村で静かに暮らす古賀裕徳であったが、ある日、黒尽くめの集団が村を襲う。命からがら逃走した裕徳は、村を襲撃したのが織田信長率いる破壊工作忍者集団『血面党』であることを知る。血面党壊滅と信長打倒を誓う裕徳は、刀や銃をも凌ぐ最強の武術とされる「小林寺拳法」の噂を聞き、崖から転落したり川に流されたり熊に襲われたりの艱難辛苦の末、遂に熊野の山奥に隠れ立つ小林寺に辿り着く。      

        • サイコレイダー

           俺の名は台場裕人。サイコレイダーだ。サイコレイダーとは何かとおまえは問うに違いない。問えよ。他者の精神世界に入り込み、記憶を探る能力を持つ者、それがサイコレイダーなのだ。誰だ、今パクリと言った奴は。俺は誰かを真似てサイコレイダーをやっているのではない。そもそも真似て出来ることではない。夢枕獏など読んだこともない。  インドの山奥で修行し、鳥や獣や草木の声に耳を澄まし、この世界に満ちている精神エネルギーの場『理力』をはっきりと実感出来る様になった時、俺は自然にその能力を身に付

          『新007/完璧な日曜日』シーン3

           日曜の昼下がりにシャフツベリー・アヴェニューのカフェでバナナサンデーを食べながら少年サンデーを読んでいたジェイムズ古賀の前にブカブカのブルゾンを羽織った体格の良い男が立つ。 「オー、アナタガコガ=サンデースカ?」 「いかにも」見上げた古賀は男の一挙一動を見逃すまいと警戒モードを最大に引き上げて答える。「オバケのQ太郎に見えるか」  ハッハッハッと仰け反りながら笑い声を上げる男は、上体を戻しながらブルゾンの内側に右手を入れると「デハオバケニナッテクダサーイ!」と言いながら大型

          『新007/完璧な日曜日』シーン3

          Stand By It

          「何だと思う?」  クラスメイトが掌に乗せた石を見せながら言った。よく見るとそれは石ではなく、緑色の塗料がついたコンクリートの破片だった。椎谷灯台の欠片だと彼は言った。自転車で行って来たという。  僕たちは色めきたった。椎谷灯台までは往復四十キロはあるし、自転車で校区外へ出ることは禁止されていたし、なにより僕たちはまだ小学三年生だった。  その日から彼はちょっとした勇者になった。 「俺たちも行こう」と負けず嫌いのKが言った。  日曜日。学校近くの神社にKと僕、そしていつもつ

          佐渡情話一刀両断

          「佐渡情話」という物語がある。  知らない? よし、解散! というわけにもいかないので強引に話を進めるが、あるのだ。  1962年に美空ひばりがこの物語を元にした『ひばりの佐渡情話』という曲をヒットさせているので、おそらくご年配の方はご存じなのではないだろうか、などと言う私がなぜこの物語を知っているかといえば、ご当地もご当地、ご当地のピンポイント、ザご当地オブご当地に住んでいるからである。ゆえに子供の頃から事あるごとに「昔こんなことがあった」と聞かされていたわけだ。  大い

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          有馬記念の予想

           現代は時間との戦いですといえばクイズタイムショックだが、競馬予想は迷いとの戦いである。時間との戦いに負けてもせいぜい椅子が回る程度だが、迷いとの戦いに負ければ、場合によっては首が回らないという事態に直面する。そんな首が回らなくなるような賭け方をしてはいけません。とはいうものの、痛みを感じないような負けを繰り返す先には、依存症という怪物が口を開けて獲物を呑み込もうとしているのである。だから一年の集大成有馬記念くらいはショックで倒れるような負け方をしなくてはならない。俺たちには

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          イグBFCとは何だったのか

          「この先、日本国憲法通じず」                 ー『犬鳴村』            ※  圧倒的な期待と人気とを背負いながらレースを惨敗する馬がいると、ネットの競馬板にはこんなスレッドが立ちます。 「〇〇とは何だったのか」  馬だよ。あたりまえじゃん。あれ熊じゃねえだろ。K付いてないよな。UMAだよな。急に未確認生物感が出てしまいましたが、なんにせよ生き物ですよ。そりゃあやる気のない時だって腹の痛い時だってあるでしょうよ。だから圧倒的な期待も人気も本人…

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          アメリカ帰りの男

           ……なんだ、誰かと思えばマツイさんとこの息子さんじゃないか。名前は何といったかな……ああ、ヒデキ君か。いくつになった。もう中学卒業か。早いもんだな。成績優秀だそうじゃないか。末は博士か大臣かってやつだな。で、何か用かい。  ん? あ、ああそうだよ。誰に聞いたんだい……あー、うん、そうか。確かにおじさんはアメリカ帰りだ。中学の時に渡米してね。まあこう言っちゃなんだが、中身はアメリカ人みたいなもんだ。なんというかな、子供なりに日本は狭いと思っちゃったんだな。このままだとちっち

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          本格やきう小説『大決戦』

          ※第6回阿波しらさぎ文学賞必然的落選作 「やきゅうだ。やきゅうで決める」  列席者は皆、その音を頭の中で即座に漢字に変換することができなかった。そして唯一当てはまる単語に困惑した。  野球?  不穏極まる国際情勢と予測される大災害を見据えた首都機能分散計画、その核ともいえる第二首都選定会議は紛糾に紛糾を重ね、第十五回にして未だ結論が出せずにいた。  なんとか二箇所にまで絞り込まれた候補地は、佐渡島要塞化計画をぶち上げた新潟、そしてジオ四国電子首都計画を牽引する徳島であった。

          本格やきう小説『大決戦』

          阿賀北ノベルジャムとは何だったのか

          阿賀北ノベルジャムの応募が締め切られた数日後、私はNEWSのツアーに参戦する長女とともにサンドーム福井に向かっていたのである。その途上だった。 昨年の参加者MさんからDMが入った。欠員が発生して追加の参加者を探している、興味があったら運営に連絡してはどうかというのである。私は考えた。おりしもSANJO PUBLISHINGさんに貸棚を開くなど、地域に片脚をつけた活動を模索していたからである。地元のイベントだし、まあ一肌脱ぐか(偉そう)、それが間違いの元だった。いや、結果的に間

          阿賀北ノベルジャムとは何だったのか

          『いぬねこグランプリ』審査結果発表!

          春寒の候、みなさまいかがお過ごしでございましょうか。 さて、阿賀北ノベルジャム「チームいぬねこ出版」プロモーション企画『いぬねこグランプリ』に多数のご参加誠にありがとうございました。厳正な(たぶん。いや、厳正。誰がなんと言おうと厳正)審査の結果、各賞が決定いたしました。 阿賀北ノベルジャムといぬねこグランプリ、そして参加作品まとめはこちらを。 では、結果発表です! ※各賞は賞名担当者が決定しております。かぶらなかったので合議にはなりませんでした。 (ちゃんと聴くようにw

          『いぬねこグランプリ』審査結果発表!

          五頭大の人生における平凡なある一日

          ※阿賀北ノベルジャム、チーム「いぬねこ出版」独自企画いぬねこグランプリ非参加作品。日比野心労『県北戦士アガキタイオン』スピンオフ。

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          月を指差したなら月を見ろ

          M☆A☆S☆Hさんの詩集を手にしてからかなり時間が経ってしまった。 感想を伝えようと思いながらもここまで躊躇していたのには理由がある。それは見方を変えれば「言い訳」にすぎないのだが、聞くところによると自分だけではなく、あまり感想は寄せられていないらしい。果たしてそれが自分と同じ「言い訳」故なのかどうかは別として、論理的な言葉で語り始めた瞬間に、自身の言葉がそれを語ろうとする作品と決定的に乖離する感覚は、おそらく誰もに共通しているのではないかという確信に近いものはあるのだ。下世

          月を指差したなら月を見ろ

          冬乃くじはシーマ・ガラハウか!?〜『健康と対話』特別感想文〜

          文学フリマの帰りにきさめさんが私の前にやってきて、BFCの決勝作品をまだ読んでいないだろう。読め、そして感想を寄せろと言った。 きさめさんというのは冬乃くじに極めて近しい、同一人物といっても決して過言ではない人であることを私は知っている。そのきさめさんによれば、冬乃くじはなんとBFC4の決勝戦において「イグ」を提出したらしい。 (えー、ここまで読んでBFCとは何かとかイグって何だとか疑問に思っている方はですね、この先さらに苦しくなりますので、まずこれを読みましょう) で、

          冬乃くじはシーマ・ガラハウか!?〜『健康と対話』特別感想文〜