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"救えた命、救えなかった命"

9年前の3月、高校を卒業し、進路も決まっていなかった自分がいた。

あの日、自分は何を感じ何を考えたのか。

誰でも壁にぶち当たった時、踏み出せない一歩がある。

だけど、本当は自分の中でどんな人間になりたいのか、既に答えは出ているような気がした。

そして今、自分は消防士として働いている。

誰もがあいつが消防士になれるわけないって笑ったけど、俺は猛勉強して夢を叶えた。

何度も何度も失敗を繰り返し、気づけば4年という月日が流れていた。

仲間たちが大学で過ごした4年間を、自分はただ必死に、夢を叶える為だけに費やした。

いろんなものを失い、犠牲にした4年間。

その分、自分が消防士に対する憧れや理想、期待が膨らんでいた。

だが、消防士として6年経つ今、理想と現実は違った。 "救えた命、救えなかった命"

あの大津波が人々を襲う映像を見て、自分は何を考えていたんだろうか。

人を救うということは甘くなかった。

自らにも救いが必要な人間に他人を救えるわけがなかった。

人の生死の狭間で、人の命を救いたい、もっと人の役にたちたいと、いつまで思えるのか。

困難に直面する必要がなければ、人生はもっと楽になると思う。

だけど、安逸な人生を送る人間ほど値打ちもない。

苦しい試練こそが人格を鍛え上げ、自助の精神と有意義な自己修養の機会を与えてくれると思う。

人生は一度きり、人生は儚い。

どんな選択肢であっても、正解と言いたい。

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