私が地の文をキャラ口調にするワケ
小説には、登場人物の視点から書くものと、神(第三者)視点から書くものに大別されます(二人称視点とかもありますが、今回は取り扱いません)。
私が二次創作で執筆するとき、大抵一人称視点(つまり、登場人物視点)で書くことが多いです。理由としてはいくつかあるのですが、特にキャラクターの活き活きとした心情描写を表現したいからです。
先日冬コミでお話させていただいたフォロワーさんが、「Fujiさんは地の文のセリフ使いに気を遣われている印象がある」とおっしゃっていました。自分がいちばん気を遣っている部分に感じて指摘してくださり、(同人)作家冥利に尽きます。
プロットや話の展開に関しては、辻褄が合えばいいやっていう感じでゆるーく書いてます。ほどほどに、完璧を目指しすぎないというのが、同人作家としてのポリシーですので。だって趣味でやってるんだもん。ストイックにやらなくたっていいじゃない。
ですが、一人称の地の文を書くときは、キャラの言葉遣いから語尾までかなり気を払っています。書いた後もキャラのボイスでセリフを脳内再生し、違和感がないか確かめることも多いです。
キャラボイスの脳内再生、というところで例をひとつ。デパプリの拓海(とゆい)のお話を書くときは、思春期男子のステレオタイプに過剰に当てはまらないように、セリフを何度も脳内再生しました。
彼はゆいに対して素直になれないところがありますが、決して言葉遣いが悪い子ではありません(むしろ出来すぎてるぐらいに言葉遣いがちゃんとしてる子です)。拓海の気持ちになって読んでいる読者さんが違和感を抱かないよう、地の文に使う言葉は慎重に選定したつもりです。
もし文末に丁寧語を合わせた方が合うなと思った場合は、絵本の地の文のような書き方をすることもあります。たとえば、「〇〇だったのです」みたいな書き方ですね。
絵本の語りみたいな書き方をすると、優しいキャラがまとっているポワポワってした雰囲気を表現しやすいんですよね。自分の書くキャラで挙げるとするなら、ましろ(ひろプリ)とか、ライスシャワー(ウマ娘)とかでしょうか。特にプリキュアの二次創作では相性のいい感じがします。
逆に、だ・である調(断定口調)は、できれば使わないようにしています。硬派なキャラであればいいのですが、文末に「だ」を添えると、自分の中で生み出そうとしていた繊細な何かが崩れてしまいそうな気がするからです。
自分で自作品を自己評価するとき、地の文をどれだけ視点に据えたキャラっぽく書けたかというところが、大きなウェイトを占めています。
逆の場合も然り、地の文を書く際にキャラのセリフが流れるように出てくるときは、筆が進んでいるときです。この場合は、お気に入りの作品に高確率でなることが多いです。
キャラのセリフで一人称を書く理由
キャラの口調をベースに、地の文を書く理由は主に、二つあります。
一つ目は一般的な理由で、一人称の方が読者さんが読みやすいかなと思ったからです。
複数人の人物を描く場合は三人称の使用が適している場合もあるのですが、やはり読んでもらう方には登場人物に気持ちを重ねてほしいなと思います。二次創作を読む人は、一歩引いた視点から読みたいという方もいるかもしれないですが、物語の没入に共感は欠かせないファクターなのかなと考えての選択です。
二つ目は、自分が読み手だった頃に、地の文をキャラのセリフで書くスタイルに憧れたからです。
セリフだけでなく、地の文からも、視点に立つキャラの心情を摂取できるなんて、そのキャラを二倍摂取できてるみたいでお得感ありませんか?
私が二次創作を書き始めた頃に参考にさせていただいた方の描くキャラは、目に情景が浮かぶようにとても活き活きとしていました。そのキャラの抱く感情が喜びでも悲しみでも、愛でも憎しみでも。感情を語るのが当人であれば、より鮮明に伝わってくるのです。
あくまで私の場合ですが、筆が乗ってくるとキャラに憑依したような気分になるときがあります。推しを理解する、というのはおこがましい感じがするのですが。一瞬だけ推しと感情をリンクできたような気分になれて、カタルシスを覚えるのです。二次創作を書く醍醐味の一つといってもいいかもしれません。
地の文をキャラの口調に合わせるということは、語彙選択の幅を狭めるというデメリットがあります。この制約がなかなかに厳しく、同じ言葉をなるべく使わせず、表現に幅を持たせながら、いかにそのキャラらしさを演出するかということに苦心しました。
私もそのデメリットに悩まされ、三人称にしたり、一般的な小説で使われるような文体にしたりと、試行錯誤を繰り返してきました。
結果、いまの「地の文をキャラの口調で書く」スタイルに戻ってきました。これはあくまで私の持論ですが、キャラが活き活きしていたり(逆にどんよりと落ち込んでいたり)、抱える感情や問題を表現したりするのが二次創作の醍醐味ではないかと考えています。それが実現できるのは、やはり「地の文をキャラの口調で書くこと」だという結論に至りました。
こうして一つのスタイルを確立しましたが、もっとしっくりくる書き方を見つけたら、既存のスタイルをアップデートしながら、または壊したりしながら、もっとキャラが映える地の文を書きたいなと思います。
創作論の類の話はあまり好きじゃないのですが、メモとしてまとめる感じで綴ってみました。自己内省のためにも、こんな感じの創作に関する雑記をまた書いてみたいと思います。ではまた——