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ずっと遠いから好き

ときどき「なぜかはわからないけど無性に刺さることば」と出会う。

映画、ドラマ、漫画、小説、エッセイ、日々の生活など、出会う場所はさまざまだ。一度刺さったことばは自分の中に大事にとっておく。
最近、そんな大事に抱えておきたいセリフを見つけた。

とある少年マンガの主人公と敵のバトルシーンで、傷だらけになってもなお戦おうとする互いの姿を「元気いっぱい」と敵側が表現していた。

それぞれに満身創痍でふつうに考えたら元気いっぱいなはずがなく、言葉通りの意味ではない。
緊張感に満ちた場面でこんな言葉選びをするのかと思わずページをめくる手が止まる。
正直このキャラクターのことはあまり好きではない。でもこのセリフはめちゃくちゃ好き。そう思った。

考えてみると、ボロボロの状態をベストコンディションと呼んだり、苦しい状況を面白いと言ったりと、少年マンガの一見矛盾するような言い回しが昔から好きだった。
そんなセリフ、私では思いつきもしないし、ひっそりと心の中で呟いてもまるでしっくりこない。借りてきたセリフにしかならない。だからこそ好きだし、憧れなのだと思う。

それからは仕事終わりの疲れ切った帰り道、睡魔と戦っているときに脳内で例のセリフが再生される。
元気いっぱいなわけあるかい疲れきっとるわと思いつつ、あの場面でこの言葉選び、やっぱりイカすな…と悔しくもときめいてしまう。

仕方ない。帰ったらちゃんとお風呂に入ってご飯を食べて、明日の支度をしてから寝よう。だって元気いっぱいだからね。そう心の中で呟く。
らしくなさにちょっと笑えて、一瞬睡魔を忘れた。

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