夢中になれることは救い
昔、全くソリが合わない上司と仕事をしていた時期がありました。
威圧的だとかセクハラ発言をするとかそういう人ではありません。
ただただ、"アウトとセーフのラインが全く読めない"上司でした。
どんな仕事でも人それぞれやり方の癖とかポリシーとかこだわりがあると思います。
是非は別として、
あの人はこの件についてはこう言いそうだな
先にこれをやっておけばこの人は文句は言わないだろう
こんな超個人的な対人マニュアルを誰しも持っていると思います。
大体3ヶ月くらいでその人の傾向と対策が出来上がるんじゃないかな。
私はこの上司と2年一緒に仕事をして、最後まで上司の傾向と対策が分かりませんでした。
まぁ簡単に言うと
言われたことをやると上司のやり方との違いを指摘され、
言われていないことをやれば当然訂正され、
質問すればそんなこともわからないのかと呆れられ、
最終的に「小鳥谷は使えない」という評価を2年かけて立派に積み上げました。
いやーまいったまいった。
今なら単に若手を育てる気があんまりない人だったんだなと思います。
実際、私も覚えの悪い小娘でした。
でも当時は希望して行った部署でそんな扱いを受けたので、「私は本当に能力が低い人間なんだな」と異動して4ヶ月後には転職サイトを覗くようになりました。
大都市なら勢いで辞められたのかもしれません。
でも私は、どうしても辞めたいですと言う勇気が出ませんでした。
そもそも転職って他にやりたいことがあってするのがセオリーだと思うんですよね。
まぁ心身の限界で緊急避難的な退職はもちろんアリですが、私はそこまで切羽詰まってはいませんでした。
そうは言っても自分の居場所のない職場に明日も明後日も出勤しなければいけません。
私の上司が隣のシマの上司に暗に(コイツ何もわかってないんですよやってられんすわー)というアイコンタクトをしているのを
(ええ、私もそう思います)と内心思いながらニコニコ雑用する私と
それを見て言葉を失う隣のシマの部下数名。
という罰ゲームのような職場で1日頑張って家に帰ると、もう脳みその処理能力は20年前のMacです。(失礼)
初めは、「帰宅後1時間で夕飯と風呂を済ませて速攻布団に入って寝る」ことで日中のストレスを誤魔化していました。
私にとって睡眠は最強のストレス緩和です。
寝逃げ万歳。
ところが段々「自分のための時間」が1分もないことに違和感を感じ始めました。
いわゆる余暇の時間が1日の中でないのです。
平日は5時半に起きて6時半に家を出て20時に帰ってきて21時に寝るって感じの生活。
土日はどちらか出勤かどちらも出勤。
十分すぎる睡眠時間を削ってでも余暇の時間を持つべきかもしれない。
でもテレビを見る気にもならないし、お酒はそもそも飲めません。
料理を楽しむ才能に至っては生まれた時から持ち合わせていません。
あれ、私の好きなことって何だったっけ。
楽しいことが分からなくなってる。
知らないうちに感受性が死んでいることに気が付きました。
起きてると仕事のことを考えてしまいます。
どうにか仕事を忘れられる(かつ起きている)時間を作った方がいいんだけど…
そういやしばらく絵、描いてないなぁ。
大学は美術系だったので多分他の人より絵を描くことへの抵抗はありません。
なんとなく、その辺にあったチラシの裏にボールペンでグリグリと思いつくままに描いてみました。
わぁ。久しぶりの落書き楽しい。
すぐに小さなケント紙を買ってきて、ボールペンをつけペンとインクに替えました。
おぉ。ずーっと描いていられる。
仕事から帰ったら眠くなるまで描き続けました。
首と肩がめちゃくちゃ凝るので次の日に悪影響でしかないのですが、描いている間は不思議と何もかも忘れました。
寝る時間になると
うげー明日も仕事かー
ってなるんですが、少しずつ変わっていく絵を見て
今日はだいぶ進んだな
という小さな達成感の方が勝りました。
無心になってひたすら描く行為は、写経に似ていると思います。写経したことないけど。
仕事キツいとか結婚できるのかなとか老後1人で生きていけるかなとか色んな雑念を忘れられました。
つらいときこそ夢中になれることが支えてくれると初めて知りました。
結局そのまま2年頑張れました。
人事異動に名前が載った時はめちゃくちゃ嬉しかったです。サラバ上司。アデュー。
携帯のアルバムを整理していたら当時私が写経のごとく無心で描いていた絵の写真が出てきました。
少し執念を感じます。
私の苦悩の日々よ、成仏したまえ。
デジタルもいいけどやっぱりアナログも好き。
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