初夢
”初夢は、見ることができませんでした。夢などない。目標があるだけだ”
そう、ツイートした。しかし、俺は初夢を見たのだった。
トムソンの実験の夢を見た。バネ振り子の実験の夢を見た。
雪の降る道を歩いていると、突然、両脇に巨大な電極が現れた。前に進もうとしても、足はどんどん道を逸れる方向に進んでいく。左へ逸れたと思えば、次は右へ逸れる。そんなことを繰り返しながら、青みがかった灰白色の空を見上げた。低い高度にぼやけた太陽が見える。そのまま歩いていると、段差に足を取られ、よろめいてしまった。そのとき、上下方向にも電場が生じたようで、両足が地面から浮き上がった。ジェットコースターが急降下するときのような、内臓が持ち上げられる感触がする。
鉛色の空に飲まれる。
俺はとっさに、あたりに掴まれるものがないか探した。真っ白な道の中に、赤いものがあった。それはバネだった。車のサスペンションくらいの大きさの、頑丈そうなバネが地面から突き出ている。左手でバネを掴んだ瞬間、頭の中でブレーカーが落ちるような音がした。
太陽の電源が落ちたのだ。先ほどまで黄みがかった白色光とマイクロ波を出していたそれは今、空を黒く照らしている。
と同時に、電場も消えた。空に吸い込まれると思ったら、今度は頭から地面へ落ちる。幸いなことに、下が雪だったので怪我はしなかった。早く立ち上がらないと、全身ずぶ濡れになる。そう思って手をついたら、さらに異変に気付いた。先ほどまで鉛直方向に設置されていたバネが水平方向に伸び、俺は地面を猛スピードで滑っている。いつか受けたスキー検定を思い出した。
しばらく滑っていると、バネは伸び切ったようで、速度が0になった。このまま掴まっていれば、弾性力が俺を逆方向に引き戻してくれるだろう。そう考えて、バネに身を預けた。少しずつ速度を上げて、バネが縮んでいく。
……
気が付くと俺は、見慣れた天井を見上げていた。まだ布団から這い出るには寒くて、ぼんやりと考えを巡らせる。
夢に関する話題として、いつかどこかで読んだ、ニンジンを積んだリヤカーの夢の逸話を思い出した。
いま見たこの夢は一体、何を表しているのだろう?
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