父さんと母さん 2話
お店の近くまで来ると、なぜだか急に小便をしたくなり両親を外で待たせてコンビニのトイレを借りに行った。トイレのドアを開けようとしたとき同年代位の女性が出てきて入れ替わる形になった。そのときその女性はぼくを見て笑顔で誘っているようにも見えた。美人でいい匂いのする水商売されている方とすぐ分かった。お酒が入っているのか妙に妖艶でこのまま声をかければ成功する雰囲気だったが、この日は両親と一緒だ。ぼくはすぐに諦めたがもったいない気がしたのと同時に神様を恨んだ。どうして別の日にこうしたチャンスをくれないの?笑
コンビニを出たらすぐに目的のお店に入った。予約をしていたのですぐに2階の個室部屋に通された。静かな和室で落ち着いて話すには絶好の場所だ。若女将が注文を取りに来たのでぼくは「じゃあ、コースを3人前で」と言うと、すかさず父さんが「これ2人前でもいい?」とおかしなこと言う。女将も少し困った様子で「2人前だと少ないような気もしますので、できれば3人前が良いかと」どうやら少しでも料金を少なくしようと思ったのだろう、メニューにある金額がまあまあ高いのだから気持ちは分かるが、こういうお店に来てまでいいじゃないか、と父さんに言い聞かせて3人前に決めた。あとから気付いたのだが、きっとぼくが奢ってあげるものだと察知して気を利かしてくれたのだと。残念ながらぼくはそこまで考えておらず単純に食べたいものを注文すること、両親に地元の美味しいものを食べさせてあげたい、と思っただけで奢る考えは持ち合わせていなかったのだ。