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Netflix『百年の孤独』感想

今夏、1972年のガブリエル・ガルシア=マルケス著「百年の孤独」が初めて日本語訳で文庫化され異例のヒットを飛ばしたとニュースになっていて、さらにNetflixで実写化というのもそれなりに騒がれていたはずだけどいざ配信されてみるとあまり誰も話題にしてないのはどういうことだ、試写の評判が悪いのかしら、とか思っていたので観てみました。先に結論を言うと、素晴らしかった!

何より制作者サイドのこの実写化作品を駄作にはしないぞという気合をビシビシ感じるんだよ。圧倒的な規模の撮影にキメ画の多いカメラワーク。キャストの演技もそれぞれ凄くて、演じてると思えない実存感。ホセ・アルカディオ・ブエンディアが建国したマコンドの栄枯盛衰を彼の一生と共になぞっていく壮大なストーリーで、建国当時の牧歌的な体制が教会の建設や納税制度の導入などで徐々に為政者の権力に飲み込まれ変わっていく一部始終を見せてくれる物語の骨組みが実にしっかりしていた。まあそのへんは50年読まれ続けている作品なので当たり前と言えば当たり前なのですが。ちなみに原作未読です。

人の理想はそれぞれ違う。人の為に良かれと思って行ったことが他の人にとっては都合の悪い事態を招き、些細な衝突(conflict)を生み、やがて戦争へと発展していく。敵も味方も兵士もいない、家の壁を好きな色に塗っていい、そんな国を守ることの難しさ。人間がいかに愚かで不完全かを存分に描いており教訓としても素晴らしかった。
突然空中に浮いたり、土を食べたり、半生のほとんどを木に括られて過ごす人がいるなどフィクションらしいトンデモ設定も楽しいし、残虐シーンもエロシーンも妥協なし。ルベツキがやったのかと見紛うような斬新な撮影も挟み込まれ見どころ盛りだくさん。これでも原作の全然序盤らしく、もっと騒がれてくれないとシーズン2以降は予定通りに作られるのか不安になるけど、楽しみに待ちたいなと。

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