小さな虫を潰したら
黒い死骸が人さし指に残った
顔に止まったのが悪いのだけれど
さっきまでは生きていたから
やはり罪を感じる
命の重さに
違いはないのだ
私は虫を
殺した
しかし
誰からも
咎められず
生きていく
命の重さに
違いはないはずなのに
虫は私を
殺せない
しかも
誰からも
悼まれず
死んでいく
命の重さに
違いはあるのか?
人さし指の黒を
ティッシュで拭いて
ゴミ箱に捨てる
そして 手を合わす
許しを請う殺虫者は
人間社会では小さな黒い虫
お前の代わり
なんて
いくらでもいる
契約が終われば
ポイっと捨てられるのだ