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詩148「ランドセルの隊列」

ランドセルが
歩いていく

先頭は高く
中は低く
最後尾は高い

まだ新しいランドセルを守る
たぶん六年目のランドセルは
味のある色合いになり

秋の田園風景に
七人の列が馴染んで
一枚の絵を観ているようだ

昔のように
赤と黒だけでなく
青、紫、茶、ピンクも

その昔、僕も
集団登校した

一年生の頃は
六年生に守られ
六年生になったら
一年生を守りながら

毎朝一緒に歩いた
前後十年の仲間のほとんどは
顔も名前も忘れてしまったけれど

そして
僕らが
歩いた
田園風景は
もう消えてしまった

一人旅の
早朝散歩で
ランドセルの隊列とすれ違い
しばし
あの頃の自分を探す

六年生になった僕は
ほんとうは
先頭を歩きたかったのだが
生徒会長だった
幼馴染の女の子に譲り
最後尾を歩いた

七人の列も
先頭は女の子で
最後尾は男の子だ

初恋の相手は
僕よりも背が高かった

もちろん
顔も
名前も
声も
はっきりと憶えている

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