『悲しみの秘義』若松英輔(11)【覚悟の発見】
最近、「覚悟」という言葉を何度か使った。仕事をしている中で。
「覚悟を決めた」みたいな感じだろうか。でも、実際は「開き直り」であり、「なるようになれ」という気持ちだった。
【覚悟の発見】を読んで、大きな勘違いであることが分かった。そりゃそうだろう、と思いつつ、恥ずかしい。
最後に若松さんは「覚悟とは常に、簡単明瞭な、だが強靭な内語との邂逅なのではないだろうか」と言っている。まったく、反対だな、僕は。
それにしても、著者は「言葉」にこだわる。何はともあれ、「言葉」が大事なのだ。生きて行く上で、とてもとても大事なのである。それを『悲しみの秘義』を通じて言い続けている。その姿勢に若松さんの「覚悟」を感じる。彼は「言葉」に救われ、助けられたのだ。
「死の床にある人、絶望の底にある人を救うことができるのは、医療ではなく言葉である。宗教でもなくて、言葉である。」
若松さんが教えてくれた、哲学者の池田晶子さんの言葉は僕の心の深いところへしっかりと届いた。