『悲しみの秘義』若松英輔(28)【あとがき】
【単行本のあとがき】【文庫あとがき】ともに、それぞれ章として読んでも十分味わえるレベルにある。ただ、本章のような静かな落ち着きはない。あとがきは、余所行きではなく、地声で語っているのような印象を受ける。意識的に書き分けているのではないだろうか?
読むこと、書くこと。
このバランスが大切で、どちらか一方では駄目なのだ。
文庫の表紙、文中に置かれた刺繍作家の沖潤子さんの作品が、とても若松さんの語り口調と合致としている。正直言うと、書店でどの文庫を買うべきか迷っていたのだが、表紙がきれいだったので、僕は『悲しみの秘義』を手にしたのだ。
悲しみを生きるとは、朽ちることのない希望を見出そうとする旅の異名
なのではないだろうか。
若松さんが「あとがき」に込められたメッセージをしっかりと受け止め、僕は『悲しみの秘義』を何度も読み続ける。