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詩126「黒い果実」

黒くて甘い果実と
黒くて苦い果実を
贈ります

メッセージが添えられた
宅急便が届いたのだが
どちらが甘くて
どちらが苦いのか
書かれていない

鼻を
近づけても
どちらも無臭だ

二つに一つ
だから、
甘ければ
もう一つは食べない
苦ければ
もう一つを食べればいい

いや
待て

贈り主を
思い浮かべれば
どちらも
苦い可能性も高い

ひとり悩んでいると
帰宅した小学生の息子が
果実を手にして
口に放り込む

 甘くて
 美味しいよ
 パパ

つまり、
残りは苦い
ということになる

 先より
 甘いよ
 パパ

黒くて甘い二つの果実は
忠告する間もなく
若い胃袋に消えた

私は
試されたのだ

小さい人にあって
大きい人にないもの
否、失くしたもの

口の中が
苦くなる 

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