『悲しみの秘義』若松英輔(27)【死者の季節】
死者はいるか、いないか。あるいは、存在を信じるか、信じないか。
最終章において、何かしら「結論」を期待して読むと、正直少し拍子抜けする。若松さんは「考え続ける」「思い続ける」「感じ続ける」という意味を最終章に込めたように思える。
若松さん個人としては、きっと「結論」が出ているはずだ。
けれど、その「結論」を書かずに最終章を終えたのは、どちら側の人にも寄り添うためだと思う。
『悲しみの秘義』は、読みながら考え、読み終えてからも考え、ふとした時に再び読んで考える、という「きっかけ」となる一冊なのだ。
来春(2025.4.2)は母の三十三回忌である。僕も妹も母が亡くなった年齢を超えて生きている。そして、兄妹で法要を執り行う。
少し親孝行ができたのかな、と思っている。
親戚と会うと、みなさん、いまだに亡くなった母のことを自然と話す。明るくて、いつも笑っていたと。そして、それぞれが忘れられない出来事も添えて。何度も聞いた話だが、何度聞いても嬉しいし、誇らしい。
死者は生き続ける。
僕の実体験に基づく思いだ。僕も「生き続ける死者」になりたい、と思いながら「生者を生きている」途中である。
これからも、時々『悲しみの秘義』を手にすることになるだろう。26章を丁寧に紡がれた若松英輔さんに感謝したい。ありがとうございました。