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詩139「金魚と彼」

死んだら
どんな気分?

彼は
沈んだままの金魚に
話しかける

硬直した死骸は
答えるはずもない

死んだもの

生きているもの

金魚と彼は
長い間
ともに暮らしたが
金魚が
死ぬなんて
彼は考えたこともなかった

死と生を
隔てる
壁を彼は感じる

でも
それは
生きているからかもしれない

金魚は
壁なんて
感じていないのかもしれない

水槽の前で
じっくりと
長いこと考え込む

死んでいるもの

生きているもの

金魚は
死んでいるものとして
存在している

埋葬されて
土に還っても
死んでいるものとして
存在している

そして

自分は
生きているものとして
存在している

 僕らは 
 ともに存在している

 ただ

 棲む世界が 
 違うだけなのだ

彼は
浮き上がった
金魚を
手で掬い
庭へ向かう 

壁が消えたのかもしれない

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