詩131「読者投稿」
毎月読む雑誌があって、とても良いことが書いてあるので、いつも
なるほどと頷き、心が平たくなり、渇いた喉を潤す清涼飲料水みた
いな存在なのだが、今月は違って、読んでいたら涙がこみ上げ、い
つもの癒しや潤いではなく心の底から共感し、わたしはわたしが追
い込まれていることに気がついた。他者の悩みや後悔の物語がわたし
と重なり、わたしの悩みや後悔の物語となって一気に押し寄せ、心
に溜まった澱をきれいに流し、涙となって体の外に排出された。わ
たしはわたしをあまりに知らないから、いつか壊れていたかもしれ
ず、大袈裟ではなく、救われたと思っている。或る友人にすすめら
れて読み始め、その後、或る友人とは疎遠となってしまったが、な
ぜか雑誌は読み続け、今日のために彼と出会い、雑誌と出合ったの
だとひとり合点する。或る友人はどうしているのだろう? わたし
には他者だったが、家庭に恵まれず生活に苦しんでいた彼にとって
は、今日のわたしみたいに自身の物語だったに違いない。多くを語
らない代わりに、他者の物語を通じて自身の心境を伝えたかったの
ではないか? と今頃になって気づくのだから、わたしは恵まれて
育ち、彼の境遇も知らん顔で、いかに何も考えずに生きていたのか
と自省する。
疎遠になった或る友人と貴誌に感謝します。(A 50代男性)