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松本竣介 街と人(大山崎山荘美術館)

 阪急の大山崎駅を出て直ぐに「味彩(あじさい)」という中華料理屋があり、開店前に列ができていたので、先ずは腹ごしらえをしてから、と思い僕も並んだ(時と場合によるが、基本的に列に弱いのだ……)。しばらくして、列の原因が三世代と思われるプチ団体客(7人)によるものだと気づいたが、すっかり中華料理気分になってしまったので、5分程待って開店と同時に着席した。

 酢豚ランチ(1,375円)…酢豚、サラダ、玉子スープ、ライス

 メインの酢豚はもちろん、玉子スープが美味しくて、とても良い店だと思った。僕は「味噌汁が美味しい定食屋」は何を食べても美味しい、という考えを持っているので、味彩は信頼できると確信した。

 いざ、大山崎山荘美術館へ。

 久しぶりに足を運んだのだが、途中で「こんなに坂がきつかったっけ?」と思いながら、息苦しくなり、マスクを外した。たぶん、ここ数年で体力が落ちたからだろう。普段から、もう少し歩かなければ……。反省。

 へとへとになって辿り着いた大山崎山荘美術館は、やはり素敵な建築物である。そして、苦労して上った甲斐があり、眺望も素晴らしい。一気に疲れが吹っ飛ぶ。まだ訪れたことのない人は、山荘や庭園を観に来るだけでも価値があると思う。

 松本竣介 街と人

 1948年に36歳で亡くなった夭逝画家の松本竣介は、長野県上田市の無言館で知られる窪島誠一郎さんの書籍を通じて知り、大学生の頃に信濃デッサン館(今は閉館)で観たのが初めてで、それ以来、色々な美術館で目にする機会はあったが、今回のようにまとめて観ることはなかったので、非常に見応えがあった。

 展覧会のタイトルが「街と人」になっている意味が、竣介の作品を追うと良く分かる。風景画ではなく、街を描き、そこには人がいるのだ。もちろん、街を行き交う人々を描いた「街」という作品が象徴的なのだが、不思議とぽつんと一人だけ描かれている作品が多い。特に僕が好きなのは「ニコライ堂の横の道」である。たぶん、ここに人が描かれていなかったら、僕は惹きつけられなかったと思う。黒い影のように人がひとり。それだけで、不思議と落ち着く。孤独とも捉えられるかもしれないが、僕は温かみを感じる。「Y市の橋」も同じ理由で好きである。

 そして、大山崎山荘美術館の魅力は二階のベランダからの眺望に加え、陶磁器、彫刻などの所蔵品の展示、更には新館「地中の宝石箱」がある。新館は観たら直ぐ分かるが、安藤忠雄さんの設計だ。こちらも建築物としても十分に楽しむことができる。

 モネ「睡蓮」
 ルオー「貴族的なピエロ」
 モディリアーニ「少女の肖像」

 安藤さん設計の地下室で、これらの作品に囲まれて椅子に座り、対峙する至福の時間。普段の展覧会では決してゆっくりと観られない作品ばかりだから、本当に価値がある。以前にも書いたが、僕はモディリアーニが好きなので、無茶苦茶贅沢な気分になった。実はルオーも好き。モネと対峙する人が圧倒的に多かったので、僕は少数派……なのだろう。松本竣介はルオーとモディリアーニに影響されたとのこと。関係性が興味深い。

 「地中の宝石箱」を覗いたら、また来たいなと思うこと、間違いなし。

 帰りに美術館近くの寶積寺(宝寺)に立ち寄り、閻魔大王と眷属、十一面観世音菩薩、大黒天神を拝観したのだが、特に十一面観世音菩薩が素晴らしくて、随分と長い時間本堂に留まった。穏やかな表情を観ていると、何だか、心が澄んでいくような気がするのだ。美術館入場券を提示すると割引になるので、帰りには是非とも。寺は市内のような混雑はなく、本当にゆったりとお参りできるので、おすすめ。

 松本竣介 街と人 

 4月6日まで開催とのことなので、桜の季節に合わせて訪れるのも良いと思います。


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