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詩145「店仕舞い」

思い出の店が
またひとつ
仕舞われた

潰れた
のではなく
店仕舞い

店主の人生と
店は等式で
店主とともに
店も消える

けれど
思い出は
消えない

ここで
過ごした時間は
僕が生きている限り
存在するのだから

行き詰まる度に
話を聞いてくれた
大将がいなくなり
いい加減
独り立ちしろ
と言われた気持ちになる

 永らく
 ありがとうございました
 善い人生だった
 と言って逝きました

張り紙を
何度も読み返す

 真面目すぎるのも
 生き難いものだね
 でも
 真面目が一番だから

大将の大きくて優しい声と
ふわふわの出汁巻き玉子を
思い出しながら
見事な終い方に
拍手する

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