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夢の集合体

つい先日のことだ。

友達が働いているレストランに食事をしにいった。

その彼とは大学時代の友人で、
詳細は避けるが、"やりたいことを共有して実際にやってみる"みたいな活動をするサークルで一緒だった。

彼のやりたいことは、"たぶん"料理だった。
いや、今となれば"たぶん"ではなないのだが、
なにせ彼はなかなか自分の考えを言わず、黙ってひとりでやるタイプ(わたしもそうだけど)だったので、その頃は漠然としかわからなかったのだ。
でも料理に向き合うときだけは、いつも後ろに回る彼も積極的だったので、かなりすきなのだろうなぁとは思っていた。

そんな彼は然るべき時期に就職活動をしなかった。
もともと"組織"に所属するのはあまり得意ではなさそうで、
ひとりで飄々と自由にしていたそうな感じだったので、意外ではなかったが、将来はどうするんだろうと、おせっかいながら不安には思っていた。

結局彼はいわゆる就職活動はせず、ひとりで海外に行き現地の食文化に触れたり、レストランでアルバイトしたりなどしていた。

そして大学4年の秋頃、
サークルの仲間づてから彼が東京のレストランに就職するという話を聞いた。
そこは、今のアルバイト先の先輩がかつて働いていた店で、その人の紹介で働かせてもらえることになったらしい。

わたしは正直かなりびっくりした。
専門学校を卒業しているわけでも、そのバイト先でかなりの経験を積んだわけでもない少年を雇う先に対してもそうだが、1年くらいふらふらしたそうな彼に「働きたい」と思わせるそのレストランにも驚いた。

後日、本人からなんとなく話を聞くと、
完全な見習いとして入るわけなので
給与も待遇も良いわけではなく、朝早くから夜遅くまで働くことになるとのことだった。

普段は熱意のようなものは見せない彼だが、
きっとそのレストランに惚れ、もしかしたら千と千尋の神隠し並みに勢いのある「働かせてください!」を言った場面もあったのかもしれない。
どちらにせよ、彼の思いが誰かに伝わりそのような運びになったのは友人としてとても嬉しい出来事だった。

そんなわけで、その彼のレストランに早々に行きたかったのだが、彼から「半年待ってほしい」とのお達しがあり、
つい先日になってしまったが、ようやく行くことができたのである。

わたしたちと会話していても自分の話になると、恥ずかしそうに濁すようなどこか自信なさげな人だったが、
レストランで会った彼は、わたしの記憶していた彼より堂々としていて、料理の説明や近況報告さえ、いつもより流暢に話してくれた。

帰り際に、おいしかった、また来るねというと
「いつでも。色々できるから。」
と瞬時に返してくれた。
今度飲みに行こう、というと
「まじで行きたい」
と言ってくれた。

むかしならそんなお世辞っぽいこと(今回の場合は決してお世辞ではないが)をいうと、
恥ずかしそうにごにょごにょいっていたような気がするが、
いつの間にかそれに対して心から思っています風な言葉を返せるようになったんだなぁとびっくりした。
まあ、たぶん本当に心から思っていてくれたんだろうけど。

そんなわけでそれはとても良い夜だった。
月並みな表現だが、夢を追う彼を見て、
わたしも自分のやりたいことを追ってみたいと思った。
かつての仲間が、少しでも楽しく過ごせていることを心から願った。

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