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読書日記157【まぼろしのパン屋】
松宮宏さんの作品。パン屋というのでほのぼのとした内容かなと思ってよんだら、社会派的な入り口だった。茨城県の小麦の話から始まる。主人公が食べる文字どおりの幻のパン「しあわせパン」にまつわる不思議な話の構成になっている。
夫である主人公は女房がつくるパンを恨めしく思っている。ただ、そんなことは言えない。勤続33年の電鉄マンで財務部長をしている。会社が汚職をして買った茨木県の広大な沼地の工事がとん挫されていた。その責任をとった財務部長の後釜にうだつの上がらない主人公が財務部長になった経緯があった。
つきみ野駅にマイホームを買って東京郊外から毎日延々と電車通勤をしていた。満員電車に揺られながら、何時間も電車に揺られて仕事に行き、そして帰る毎日を送っている。日曜日も仕事になり、電車に揺られるなかでおばあさんにパンを薦められる。渡された紙袋には「しあわせパン」と書かれていて中には一握り大のフランスパンが入っていた。
食べると美味しい、その美味しさにびっくりして、妻と行くことを約束した主人公だったのだけれど、行ってみると、そこにあったのは廃墟になった「しあわせパン」だった。なぜ廃墟なのか?主人公にこれから起こる会社のトラブルと相まって面白く書かれている。
短編で上手く書かれていて。読み易く文章もしっかりと書かれている。会社とは?という問題も書かれていてちょっと社会派になっているもおもしろかった。