読書日記244【夜空に泳ぐチョコレートグラミー】
町田そのこさんのデビュー作。解説にあるけれど、第15回「女による女のためのR‐18文学賞」の大賞受賞作「カメルーンの青い魚」を含む5作からなる連作短編集となっている。
女性のために書かれているというのはわかるのだけど、それが男性が読んでも面白い内容になっているのが素晴らしいと思う。
連作というか「一つの街」「一人の女性」「一つの悲劇」からなる物語の連鎖が読んでいて面白いのだ……
町田そのこさんといえば、「52ヘルツのくじらたち」本屋大賞を受賞して映画化されるほど有名になってきたけど、こんな知らない賞をとって作家デビューをして、それが本になるというのは作品が面白いというのがわかる。
芥川賞をとって有名になったり、小説が売れたりする場合があるけど、毎年2回あるこの賞で本になっても、売れない小説家がいるなかでこれだけ有名になって、映像化もされていくというのは流石にすごいなとおもう。
物語的には一人の女性とその息子の知り合いたちが織り成す物語になっている。恋愛・生活苦・いじめ・バイオレンス・ジェンダー・ドメスティックなどが描かれるのだけれど、それが嫌味でなく能動的でまるで僕らの周りに本当にいるような感覚を感じられる。
短編集なのでネタバレがあると読んだ感が薄れるので内容は割愛しておきます。ハッピーエンドではないけど、未来の光が見える感は読んでいてすごく安心できる。
町田そのこさんの著書とまとめてみると……
夜空に泳ぐチョコレートグラミー(2017年8月 新潮社)
収録作品:カメルーンの青い魚 / 夜空に泳ぐチョコレートグラミー / 波間に浮かぶイエロー / 溺れるスイミー / 海になる
ぎょらん(2018年11月 新潮社)
収録作品:ぎょらん / 夜明けのはて / 冬越しのさくら / 糸を渡す / あおい落葉 / 珠の向こう側
うつくしが丘の不幸の家 (2019年11月 東京創元社)
収録作品:おわりの家 / ままごとの家 / さなぎの家(「春待ちの家」より改題) / 夢喰いの家 / しあわせの家
52ヘルツのクジラたち(2020年4月 中央公論社)
コンビニ兄弟 テンダネス門司港こがね村店(2020年7月 新潮社)
星を掬う(2021年10月 中央公論新社)
コンビニ兄弟2 テンダネス門司港こがね村店(2022年1月 新潮社)
あなたはここにいなくとも(2022年2月 新潮社)
収録作品:おつやのよる / ばばあのマーチ / 入道雲が生まれるころ / くろい穴 / 先を生くひと
宙ごはん(2022年5月 小学館)
コンビニ兄弟3―テンダネス門司港こがね村店―(2023年9月 新潮社)
夜明けのはざま(2023年11月ポプラ社)
何冊かは読んでみようと思います。