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読書日記257 【羊をめぐる冒険】

村上春樹さんの初の長編小説。初期の3部作と言われる作品の完結となっている。(鼠三部作)ただ、『ダンス・ダンス・ダンス』というオムニバスというかスピンオフというかの作品もあるし完全な完結ではない。『ねじまき鳥のクロニクル』が完全な完結作品だとすると、『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』が完結作品でない感じがするように伏線を残してあるし、『海辺のカフカ』という作品に繋がっている。

『風の歌を聴け』で出会った鼠を探すことになった僕が、回想シーンを経て、紆余曲折を経て鼠を探す物語になっている。長編小説なので女性にも出会うことになる。

有名な話で中上健次さんや村上龍さんが長編を書いていたのに刺激を受けて専業作家になろうと、ジャズ喫茶を譲ってしまったとされている。それだけ印税も入ってきたんだろうと思うし出版社も全盛期のころだと思うので、そこらへんは「勝算がある」と考えたんだろうけど……

村上龍さんの「コインロッカーベイビーズ」に刺激を受けたという話もあるけど、海外文学の影響が多い村上春樹さんが影響うけるかな?とは思う。「インタビューは適当に答える」とも言っているし、長編小説への挑戦はアメリカの作家フィッツジェラルドの影響とは思える。

ただ、そこらへんを踏まえて読んでみるとちょっと味も変わってくる。内容は映画の『ディア・ハンター』に似ているとは言われている。実際に映画を観たことはあるのだけどそこまでかな?というのもあった。「村上春樹ワールド」は健在なのでそこらへんの強さもある。

ストーリー的には『風の歌を聴け』で出会った「鼠」と呼ばれる男性を探す旅になるのだけど、僕は通訳の仕事をしながら広告や雑誌など出版の仕事までをするような大きな会社になっている。離婚をして妻は住んでいたアパートを出て行ってしまっている。

なぜか、自分と関わった女性のことを思い出していく。そのなかで「耳のモデル」をしている女性と自分の意志で出会う。その「耳のモデル」は彼女となる。その彼女と「羊をめぐる冒険」を始めることになる。

不思議なんだけど固有名詞というのが物語に存在しない。最初からあだ名や実際にない。出会う人は妻、耳のモデルの彼女、ジェイ(バーのマスター)鼠……とそんな感じになっている。「個人がそこに存在するけど、それは僕の見ている幻覚かもしれない」ある評論家が(誰か忘れてしまった)村上春樹さんの特徴として「こういうことがあった」と架空の物語を語る人が書いている物語というのが村上春樹さんの特徴でもある。

再読だけど、何回も読める作品になっている。


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