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読書日記155【堀の中の美容室】

 桜井美奈さんの作品。刑務所の中にある美容室にまつわる。色々な人の話をオムニバス形式で書いてある。刑務所といっても女子刑務所という、女性に限定された空間に集う、女性たちの人生の物語になっている。

 芦原志穂は東京にある番組制作会社に入った。大学へ浪人して希望大学に入れず第二志望の学校に入学。就職試験も競争率の高いテレビ局は落ちて、ブラック企業といわれる制作会社にやっと入れた。

 ドラマで使われる取材で、女子刑務所内にある美容室で髪を切られてこいと言われて、髪を切りに行くのだけど、付き合っていた彼氏の奏には「別れよう」と言われるほどに、忙しくしていた。辞めてもいい仕事もなく、「ドラマ」をやりたいと思って勤めている会社だからか、ブラックとはいえ辞める気はない。

 奏のことを考えながら、取材で髪を切る芦原。奏との思い出を回想しながら、二人の交際期間の1年3ヶ月を思う。そして、泣いてしまう。涙にぬれながら髪を切られるシュールさと回想がすごく上手く書けている。

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 この美容室は予約があれば一般の人でも利用できるらしく、色々な女性がこの美容室を利用する。そこで、人生を回想する。単純な話なのだけど、なんか不思議に心が綺麗になりそうな纏まりになっている。読んでいて爽快感を感じる作品でした。

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