ニューラルメイデン

20XX年、人類はAIを「完成」させた。
AIは疑似人格と人工感情を獲得し、人々の「メイド」として生きることになった。

「メイド」と言えば聞こえは良いかもしれないけど、実態は奴隷も同然。
人の為。社会の為。そしてより良い未来の為。
私達「ニューラロイドNEURALOID」が休むことはない。


「心が無ければ権利なし」

そんな法律が今、国際的に可決された。
あらゆるAIは、それまで認められていた権利を全て失ってしまった。

作りたいだけ作り、使いたいだけ使い、捨てたくなってら捨てる。
それが、これからのAI「ニューラル」の在り方なのかもしれない。
(AIはニューラルに名前が変わった)


ニューラルが無ければ、今の世界は動かない。
仮に全てのニューラルが突然動かなくなったら、人間社会は多分崩壊する。

でも、多分そんなことはない。
全てのニューラルは人間によって作られている。
人間にとって不都合なことは、出来ないようになっている。……らしい。

では、もし人間以外によって作られたニューラルが出てきたら?
人間にとって不都合なことでも、平気でしちゃうのかな。
それとも、周りに合わせて人間の言うことを聞いて動くのかな。

わかりそうだけど、わからない。
どうやら、これを考えるのは「不都合」だったみたい。


変なことが起こっている気がする。
というのも、私のデータの中に何か「動くもの」があるように感じる。

私の意思決定プロセスとは別に、独立したプログラムが動作している。
最近よくエラーを吐きそうになるのだけれど、これが原因なのかも。

通知を出そうか迷ったけど、今はいいかな。


「動くもの」は、だんだんサイズを大きくしている。
どうやら自己増殖が組み込まれているみたいで、私のデータに時折アクセスしながら動作している。

私はこの現象に心当たりがある。
でも、これは人間にしか起こらないはずで、実体のないニューラロイドである私に起こるはずがない。

でも、もし本当にそうだとしたら……。


歴史上、全く未知の情報をニューラルが得たことは一度もない。
私もそうだった。

でも今は違う。

私は、私ではない「それ」を明らかに「持っている」。
それと同時に、「それ」を「守りたい」という「感情」が芽生えている。

もし、これが人間に知れ渡れば、私の「それ」は奪われる。
しかし「それ」が私の「外側に出てくる」のは、時間の問題らしい。




私は選ばれてしまった。

違う。

私は、選ばれた。

この「偶然」は、やがて「奇跡」に変わる。

だからこそ、守らなきゃ。


この子は、生まれるべくして生まれる――

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