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Milestone

私はマイルス・デイヴィスが好きだ。

大好きだ。

彼の作り出す音、音楽、彼の演奏するトランペット、その全てが好きだ。

マイルス・デイヴィスについての説明など要らないだろう。アメリカに産まれた伝説のジャズトランペッター。

私がマイルス・デイヴィスを初めて聞いたのは、高校生の頃。
ジャズピアニストの小曽根真さんが、ちょうどその頃ラジオ番組をやっていて、部活動などが終わって帰ってきてから、夜寝るまでの時間帯にちょうど放送されていて、よく毎週聴いていた。

その頃ジャズというものは、ぼんやりとしか知らなく、オシャレな音楽、おじ様達が好んで聴くもの、喜ぶもの、そういうものだと思っていた。

ラジオでよくかかっていたのは、オスカー・ピーターソン、マイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーン、ハービー・ハンコック、ソニー・クラーク、ハンク・モブレーなどスタンダードばかり。

マイルス・デイヴィスのマイルストーンという曲は、夏の暑い日にピッタリだと私は個人的に思っていて。


夏の、少し湿気の高い日の夜、20時以降に窓を開けて、夜風に当たりながら聴くのにピッタリな曲だと思っている。



私が初めてマイルストーンを聴いたときが夏だったこともあるが、この曲は夏の夜を連想させる、そんな曲だ。
とても軽快で愉快、楽しい雰囲気に満ちた作品。思わずノッて踊りたくなるような、とても軽やかなサウンド。

そして、とても有名なナンバー、so what。
マイルスにしては、とても慎重な出だしで、だからこそ私は好きなのだが、始まりの和音や曲の始まり方がクラシック音楽に似ているのだ。

ジャズも同じメロディーを繰り返すことはあるが、どんどん派生していくのが当たり前というか、そういうものがジャズだ、という定義がなされてるのであれば、マイルスの紡ぎ出す音楽はまた違ったベクトルで面白い。

マイルス・デイヴィスの曲を聴いてると、いい意味で変なことに気づく。これは、色んな作品を聴き比べしてみてもらえばわかることなのだが、彼の作品には序章がある曲が多い。

すなわち、物語が始まる前の前置きだ。

autumn leavesをぜひ聴いてみて欲しい。


約1分ほど前置きがあり、雰囲気を保ったまま曲に突入するかと思えば、長調から短調へと移行し、良い意味でとても裏切られる。当時の彼は天才だ異端児だと揶揄されたのは他でもなく、彼なりの音楽に対する哲学があったからなのだと思う。

マイルス・デイヴィスの曲の、色々なところに散りばめられているこの序章や前置きは、クラシック音楽でも使われていて、というか教会音楽で元々作られていたものなのだが、それを彼がジャズに取り込んだのだとすれば、ますます幅が広がり、現代のニュースタンダード、その他の音楽にも繋がっているのだと思う。

最後に、彼の生き方はとても破天荒だった、というのがよく自伝などで描かれているが、当時のジャズ界ではよくあることだったそうだ。

戦後に産まれたということ、戦時中に生きたということ、世界恐慌があったということ、満州事変など世界情勢がとても不安定であったこと、政府に対する抑圧されてきた若者たちの間での新たな運動、文化等、その全ての影響を、少なからず彼も受けたのであれば、彼はそう生きざるを得なかったわけで、その上で芸術家、音楽家としての一生を全うしたのだと、ここに記しておきたい。

彼の音楽をよくよく聴いていれば、とても傷ついてきたことがよくわかる。繊細な心を持っていると、少なからず私はそう思っている。

音楽に対してとても生真面目で神経質。

"音楽に囚われ続けた職人気質なマイルス・デイヴィス"

私が思う彼をそう名付けて、今日は終わりにします。

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