金田裕子(2001)「協同的な学習の参加構造における教師の役割:社会科討論場面における対話的・多層的なフロアの組織」

 金田さんの研究では、参加構造を研究してきたShults,J.とFlorio,S.とErickson,F.による「会話フロア」の概念を分析枠組みとして用い、社会科の授業の討論場面の分析をされている。
 「会話フロア」とは、「話し手が発言権を維持し、聞き手がそれを承認している際に形成されている会話の権利と義務の関係」であり、上述の研究者たちにより、4つのタイプが見出されているそうだ。

・タイプⅠ:主要な話し手と聞き手が質問と応答を繰り返す関係で、周囲の聞き手は聞くことに専念している。
・タイプⅡ:一人だけが話し、他の人たちすべてが聞き手になる。聞き手たちは話し手を邪魔しない程度に応答できる。
・タイプⅢ:一度に複数の人が重なりながら話すことが許容され、また、複数の話し手のうち中心に話す人が流動的に変化する。
・タイプⅣ:タイプⅠやタイプⅡのような会話の中心が同時にいくつも成立している関係。

金田(2001)

 これらのタイプによる教室の記述により、子どもの会話の状況と教師の果たしている役割を明らかにしている。

 「会話フロア」の概念については金田さんの研究を読んで初めて知った。もちろん、4つのタイプがあることも。
 事例として挙げられている福山先生の学級の学び方も素敵。基本的には子どもたちに委ねつつ、「ここは!」というところで教師が出る。それは自分の目指す授業の一つでもある。
 そして、そんな授業を「会話フロア」という視点で分析することにより、その授業の討論場面の「会話フロアの特徴」や「教師の果たしている役割」が見えてくる。そこが面白い!

 これまで知らなかった視点から授業を見ることで、新たなものが見えてくる。

 「見方」が変わると「見え方」が変わる。

 その「見方」の具体は、分析枠組み。これは、現場で同僚たちと話をしている中ではおそらく話題にあがることもなく、触れることのできない世界。ここに学術論文を読み、学ぶ意義があるように感じている。
 
 それにしても、自分が読んでいる研究論文の授業対象は、国語と社会科の授業が多い。これは偶然なのか、それとも授業対象にしやすい共通の要素があるのか。どっちなのだろう。これもまた疑問として湧き上がってきた金田さんの研究だった。

 面白かった!

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