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上京組の私は絶対に駅構内で立ち止まらない。

 現在大学生の私はいわゆる上京組です。当たり前ですが、今まで暮らしたことのない土地に引っ越して来たら、最初は少し移動だけでも迷います。まして世界一発展しているとも言える東京の鉄道網はその迷宮度も世界トップクラス。こんな場所に来たら初めての人なら皆が迷子になると言っても過言ではありません。

 そんなわけですから、上京組の学生は最初のうちはとにかく混乱します。何線に乗るのか、何番線なのか、私鉄なのかそれともJRなのか、等々。さらにレベルアップしていくと、振替輸送とか、同一ホームから様々な行先の列車が出ているとか。地方で暮らしている分には上り列車と下り列車という概念ぐらいしか使わないのでまあそりゃ分かりません。
 そして、路線図も全く不規則に張り巡らされているのでそう簡単に解読できません。ゆえに、覚えられるまでは駅の隅で立ち止まってスマホで検索するのが常套手段です。

 ですが、私はそれを極力しません。それというのは駅の隅で立ち止まること。なぜそれをしないのかというと過去にそれで嫌な思いをした経験があるからです。

 それは私が1人で東京に遊びに行った時のこと。親に一人で行けると言って長野県から飛び出してきたはいいものの、やはり東京でスムーズに電車に乗ることなんてできません。ゆえに、スマホで調べたり駅構内の路線図で確認したりして不安ながらも正しい列車を探して対応していました。そんな時、私に話しかけてきたのは70代ぐらいのおじいさん。てっきり教えてくれる優しい方なのかと思ったら、飛んできた言葉は「おじいさんね、傘がないのよ。お兄ちゃんのをくれないかな、いいからちょうだいよ。」

 私は予想だにしない言葉をかけられて、脳に危険だという信号が流れ、本能的にその場を立ち去りました。そうはいっても行く先も分からないのでとりあえず歩き続けて最終的に向かったのはトイレの個室。そして、その中で止まらない震えをこらえながら番線等を確かめ、外に出ました。

 外に出て、先ほど立ち止まっていた改札前に戻るとさっきのおじいさんはまだいました。今ではあまりそういった人を見ないかもしれませんが、コロナ禍前の夏休み中であったため、観光客も多かった気がします。そんな他の迷ってそうな人におじいさんは声をかけています。
 こういった人は「弱い人」をねらってきます。決してスーツを着てテキパキ歩くサラリーマンには絡んできません。
 おじいさんに話しかけられている人を見て見ぬふりをするのはよくないかもしれませんが、自分のことに精一杯であった私はおじいさんと目が合わないようその場から逃げ去ることしかできませんでした。

 かかる経験からそれ以来、私は東京都内のおよその路線図は頭に入れておくようにしました。全駅完璧に覚えているわけではないですが、○○駅と言われれば何線かを答えられるぐらいには脳内に路線図が仕上がっています。

 これぐらい覚えられていると、初めての駅であっても、周りの進む流れに乗りながら、路線を的確に選択して乗車することができます。人の流れに沿って自信をもって歩いていれば絡んでくる人もそうそういません。

 東京出身でないにしてはやけに詳しいので、「なんでそこまで知っているの?もしかして鉄オタ?」と聞かれることがありますが、私にとっては趣味ではありません。これは自衛手段です。

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