現役法学部生が考える、法学部が凋落した原因とは何か。
一昔前までは法学部は文系の花形学部と言われていたそうです。しかし、ここ最近は法学部人気が低迷しており、予備校の偏差値表を見ても法学部が各大学の看板学部に君臨していることは少なくなっています。一体なぜここまで法学部は凋落してしまったのでしょうか。
私は法学部が高校生から中途半端な学部と認識されてしまい、結果、意識が高く有名企業に就職したい人・大学で遊びたい人・将来の目標がまだ決まっていない人のいずれにも刺さらなくなってしまったことが原因だと考えています。
まず、意識が高く有名企業に就職したい人についてです。最近の高校生は真面目な子が多く、自分自身の将来や大学で学びたいことを真剣に考える傾向にあります。そうすると、法学部といった抽象的で中身のイメージがわきにくい学部よりも、例えば、”国際コミュニケーション学部英米文化構想学科”のような学習内容が学部名から具体的に想像できる学部の方が選ばれやすくなるのです。
”法”学部に限らず、昔は”商”学部・”文”学部といった漢字一文字の学部こそ優秀ゆえ良しとされ、名前が長く、時にはカタカナも含んでいるような学部は良く見られていなかったと聞きます。しかしながら、現代ではその評価が逆転しているといっても過言ではないのです。
一方で、大学に入ったら勉強は程々にして大学生ライフをエンジョイしたいといった高校生も一定数います。そういった人には文学部や商学部が人気なようで、「お堅そう」、「テスト偏重」、「暗記が大変」、「司法試験」といった先入観のある法学部は文系学部の中で真っ先に敬遠されることになります。
最後に、将来のプランがまだ決まっていない人についてです。自分の将来について綿密にプランニングしている一つ目に例に挙げた高校生が増えている一方で、自分自身の進路に関する変更の利かない決断を大学入試時点ではまだしたくないという層も増えている印象です。そして、彼らの需要に応えるべく、近年「社会学部」といった名を冠した学際的に学べる学部が増えています。
そういった学部では低学年次には法学・経済学・政治学といった学問を広く浅く学べ、高学年次からはそれらのうち自分自身が真に興味をもったものを中心に履修を組むことができます。これは入学初年度に色んな学部に”体験入学”できるようなもので、「絶対に失敗をしたくない」学生にとって非常に刺さる内容となっています。
このように、法学部はいずれの層の需要にもぴったりとフィットしなくなったことが人気凋落の何よりの原因だと考えています。実際、近年はこれを意識してか、法学部をさらに複数学科(例:法律学科・政治学科・国際法律学科)に細分化して募集をかけている大学が散見されます。
学部・学科名が高校生に与える印象は計り知れないですから、これは法学部の志望者増加策という点では正しい決断でしょう。一方で、法律学は他分野と有機一体に関連しているため、細分化するとかえって大学で学ぶ法学の奥深さを削いでしまう恐れがあると危惧しています。
そもそも、法学部とは名前の通り、「法とは何か?」という大命題から始まり、主要六法(憲法や民法など)を経て3,4年次でようやく消費者契約法や不動産登記法といった具体的な学問にそれらのエッセンスを落とし込んでいくという学問です。
短期的に見ると、学科に細分化することで学習内容が具体化され(たように見え)、意識が高い高校生にウケるようになるかもしれませんが、これは私が思う前述の法学部のあるべき姿とは相反しています。
法学部の志願者を増やしつつも法学部の真の魅力を壊さないこと。中々難しい問題だと思います。
記事中写真:Pixabay(2024/5/22)