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レフェリーと裁判官、フットサルと法学部。

 「かっちゃん、なんで法学部にしたの?」

 同窓会で久しぶりに旧友たちと会うとしばしばこういう話になります。まあ、お互い久しぶりで緊張しているので、当たり障りのない話をしようとしているだけで、特に深い意味はないでしょうが。

 そんで、話がややそれましたが、私が法学部を志望した理由はいくつかあります。そのうち一つが、高校時代のフットサルの審判を経験して、ルールに基づいて物事を処理するのが楽しいと感じたから、です。


 私の父の家族はみなサッカーをしており、それは私も例外ではなく、小学生の頃には習い事としてサッカーをやっていました。私はもやしっ子だったので、今もそうですが、試合で競り合いになると勝てっこなく、また技術的にも上手な方ではなく、ゆえに、サッカーも好きではありませんでした。

 そうはいっても、親に対して実力行使してサッカーを辞めさせるほど嫌いではなく(コーチがいい人でした)、ある意味惰性で中学卒業まで続けました。

 そして、高校入学。私の高校ではサッカー部とサッカーファミリーであるフットサル部が存在していました。両者の関係はガチとエンジョイ、誇張すれば1軍と2軍といった感じでした。私は中学までサッカー後進国のマレーシアにおり、そこでもレギュラーでなかったため、まずサッカー部は選択肢にはなく、フットサル部に入部しました。

 しかし、いくらサッカー部よりユルいとはいえ、世界ランキング150位代のマレーシアでベンチ又はベンチ外だった人間が同20位代の日本で試合で出られるわけがありません。事実、私がマレーシアで所属していたチームでリフティングが100回以上できる人なんて片手で収まるほどしかいませんでしたが、日本では経験者ならそれが当たり前らしいのですから。

 そんなわけで「未経験者以上経験者以下」と評された私が大会で満足に出場することはできませんでした。しかし、そんな私にも「雑用」は平等に回ってきます。大会では、各チームから審判を出さなければならないらしく、じゃんけんに負けた私にそれが回ってきました。

 マレーシアのチームでは審判を自前で出すことがなかったので知らなかったのですが、同期によると、審判というのは選手及びベンチからジャッジの不満をぶつけられることがあるものらしく、ゆえに皆が敬遠するらしいのです。それを聞いて、試合には出られないやつが不満だけはぶつけられに行かなければならないのか、と思い余計にいらいらしてきました。しかし、これが私の学部選択の転機になったのです。

 最初は緊張して色々と周りの方に迷惑をかけましたが、審判自体はやってみると意外と楽しいものでした。審判は、あらかじめ定められている競技規則に従い、反則行為があれば笛を吹いてファウルを取ります。言葉にするとこれだけなんですが、それを実際にやってみるとかなり難しいのです。

 競技規則の文言と全く同じ状況は存在しないことから、かかる状況がその文言に当たるか否かを自身で考えなければならないし、試合はどんどん進んでいくのでその判断は瞬時に下さなければなりません。それに、たとえファウルであっても状況に応じてファウルを流してプレーを続行させるべき場合も存在します(アドバンテージ)。そういった規則に各プレーを当てはめつつ瞬時に判断を下していく審判というのが、何と言えばよいでしょうか、安直ですがとても面白かったのです。

 そして、かかる作業は裁判官と似ています。裁判官も一応法律の条文は用意されていますが、具体的な事件がその条文と全く同じ状況であることはありません。彼らも自身で要件を満たしているか考えるという作業が求められるのです。

 もちろん、前述した通り、選手からジャッジについて不満をぶつけられることもありました。しかしながら、ルールブックでしっかりと学習したという自負があった私は自分のジャッジに自信があったので、案外文句を言われても気を乱されることはありませんでした。

 そんなわけで、私は審判、いや規範に事例を当てはめる楽しさを知り、進路選択の際に法学部を第一志望とするようになります。社会科が好きだった私は経済・商学部系と法学部で迷っていましたが、自分が高校時代に興味をもったものとより関わりがあるというのが、決め手となり、天秤が法学部の方へ傾きました。(なお、入学後に気づいたことですが、法学部と社会科はそれほど関連していないです。詳しくは本記事末尾の記事をご覧ください)

 

 私が法学部を選んだ理由の1つはこんな感じです。まあ、話し出すとこれだけの長さになるわけですから、「えっとね~、」と話を始めようとしても相手もそこまで興味はないので、私もフルでは話しません。かといって、冒頭のように一言で説明すると、想定外の返事なのか、「ほぇ?」といった感じのリアクションを受けます。きっと、将来○○になりたいからとか、○○が好きだから、といった理由が来ると相手は思っているのです。
 まあ、そんなことが続くと、だんだんと説明するのも面倒くさくなり、公務員になりたいから、とか適当なことを答えるようになるのですが、それはここだけの話です。


追記:よくよく考えたらサッカーが得意でない以上、高校で心機一転競技を変えればよかったのになぜ変えなかったのでしょうか。しかし、違う競技をしていればこうはならなかったでしょう。人生不思議なものです。



法律学=社会科ではないことについての記事

 


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源 勝芳(法学部生ブログ)
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