保険?自費?
「あ、指圧師さんなんですね。やってほしい〜。保険はきくんですか?」
指圧師であれば、何度もこんなケースに遭遇するのではないでしょうか。
僕も飲み屋のカウンターで初めてお会いする方とこんな話によくなります。
そんな時、「保険内の施術は医師の同意書が必要で…」なんて話すのも正直めんどくさいので、
「ごめんなさい〜保険はきかないんですよ〜」
なんて返すと、大体の方ががっかりした顔をされるんです。
ですので、ここではっきりさせておきたいのですが、「基本的に僕と外でお会いする方は、医療保険で施術することはできません。ご高齢の方などで、ご自分で通院が難しい方は、医師の同意書があれば医療保険を使用した施術が行えます」
というわけで、今回は、自費の施術と保険内の施術の違いをビジネス的な視点も含めて書いていきたいと思います。
そもそも"保険を使う"ってなに?
最初に、ものすごく簡単に我が国の医療制度を説明しますね。
例えば、あなたが怪我をしたとします。
病院に行くとします。
この時に保険証を提示するはずです。
(日本は国民全員が保険内で医療を受けれる仕組みがあります)
病院で処置をしてもらい、お会計はいくらくらいでしょう?
ものすごい金額を取られることはないですよね。
だいたいウン百円からウン千円くらいだと思います。
これは、なぜかというと、病院に払うお金の3割を自分で払って、残りの7割は国が払ってくれているからなんです。
結構当たり前のようで知らない人が多いと思うんです。若い人はそこまで病院のお世話にならないですしね。
では、冒頭のような質問を我々はどうしてされてしまうのでしょうか?
きっと飲み屋のカウンターにいたお姉さん(お兄さんかもしれないけど)は、僕を接骨院を運営される柔道整復師さんと勘違いされたんだと思うんですね。
ここでは、柔道整復師さんが取り扱う保険内での施術に関しては、専門分野ではないので割愛しますが、なぜ接骨院で保険をつかえるのかというと、骨折、脱臼、捻挫をした時は保険内で施術ができますよという法律があるから。逆に、慢性の腰痛や肩こりは、接骨院では保険がききません。
あくまでも、慢性症状のプロは、僕たち指圧師です。
ですので、骨折、脱臼、捻挫などの急性症状のプロがいるのが接骨院で、頭痛、肩こり、腰痛などの慢性症状のプロがいるのが指圧院だと思っていただけるのが認識としては間違っていないと思います。
業界のブルーオーシャン
しかしですよ。
僕ら指圧師も医療保険を使用した施術を行うことができるんです。
それが"訪問施術"。
冒頭でも書いた通りに、お医者さんの同意があれば、こちらから患者さんの家や施設に伺って、保険内での施術が可能となります。
そうなんです。
あん摩マッサージ指圧師の資格を持つことのメリットの一つは、訪問での保険診療ができるということです。(僕はこの仕組みを利用したくて指圧師になったという経緯があります)
医師の同意は必要になりますが、医師や看護師、介護のスタッフと連携をとりながら、保険内での施術が可能になります。
簡単に言うと、通院できない患者さんに訪問して、1〜3割の負担分で施術ができるということです。
これは完全に業界でのブルーオーシャンなんですよ。あん摩マッサージ指圧師の免許がないとできないですからね。
訪問施術での僕らの役割は、痛みの緩和や関節拘縮(関節が固まった状態)、筋固縮(筋肉が固くなった状態)の維持、改善をすること。
基本的に患者さんは寝たきりのご高齢の方や、外に出ることがなかなか難しい方なので、身体を動かさなくなってしまいます。
身体を動かさなくなると、関節や筋肉が固まってきてしまう。(一般的な筋疲労で筋肉が固くなるのとはちょっとメカニズムが違います)
ですので、僕らが伺うことで、筋肉を指圧・マッサージしたり、関節を動かしたりして、ケアができるということなんです。
以前もこちらで書きましたが、
指圧師の免許を取ったら、必ず訪問施術を始めるべきです。
なぜなら保険内の訪問施術をすることで、柔道整復師や鍼灸師との差別化になりますから。
1番指圧師が活躍できる現場と言っても過言ではありません。
正直な話、鍼灸院では鍼の免許が無ければそもそも働けませんし、指圧師が接骨院で働いてもトップにはなれません。接骨院は柔道整復師さんのものなのでね。
訪問施術のスキルを持てば、指圧師としての自信に繋がりますし、必ず将来の武器になります。
自費施術に思うこと
では、自費施術とはなんぞやということなんですが、"60分6千円"のような、”保険がきかない”施術のこと。
国家資格である、あん摩マッサージ指圧師や鍼灸師から民間の資格である整体やカイロプラクティック、タイマッサージ、ロミロミ…。
「どこに行ったらいいかわからない」
一般の方の本音はこれなんではないでしょうか。
実際行ってみたら何をされるかわからないし、値段もピンキリ。
60分3000円のところもあれば、15分10000円なんてのも見かけます。
ホームページを見るとみんな自分が一番的なことが書いてありますしね。
以前もこのnoteで同じようなことを書きましたが、全てに効く治療法はこの世にはありませんし、ゴッドハンドもいません。
一言で言ったら施術者とクライアントの”相性”ということになってしまいます。
でもそれではちょっと親切じゃないですよね。
ですので、いい施術者を選ぶための条件を僕なりに考えてみました。
以下の4つです。
①問診・検査をしっかりできているか?(クライアントの話を聞いてくれるか)
②検査の結果と施術方法をわかりやすくクライアントに説明できているか?
③施術中は空気を読めているか?(施術者が一人でペラペラ喋りすぎたり、痛い施術をクライアントを無視して続けたり)
④施術後の説明、アフターケア、通う頻度(かかる費用)を明確にアナウンスできているか?
上記のことができる施術者であれば、身体をまかせていいと思います。
あとは施術方法の好みや人間性で選んでいくことをお勧めします。
施術者の立場から見ても、とにかく自費施術は群雄割拠。ライバルがめちゃくちゃ多いです。
完全実力主義。
ここで我々が自覚しなければいけないことは、自費施術はニッチな業界であるということ。
僕も含めて”医療人”を謳って仕事をしていますが、お医者さんではないので、診断ができません。
自分の知識や技術に自信を持つことはとても大事ですが、SNSなどを見ていると、「ずいぶん偉そうに言ってやがんな」と感じる治療家または自称セラピストがとても多い。
ですので、自分の立場をよく理解することがまず大事なんではないかと思うんですよ。要は役割なんです。
誤解を恐れずに言うと、お医者さんに良くできない症状を、僕らが良くできることだって数多くあります。現に、僕のお店でも整形外科に通っていて改善しなかった症状が改善したケースがいくつもあるんです。
正直、そんな時は心の中でガッツポーズしてたりしますがね。
自分の実力がストレートに結果に出るところ。それが自費施術のおもしろいところではないでしょうか。
もう一つは料金面。
スキルアップして、オリジナルの存在になればなるほど、保険内の施術とは違い、技術の単価は上げられます。
あまりお金の話をすると嫌がられてしまうかもしれませんが、単価を上げることでスキルアップに間違いなく繋がると思っています。
やはりお金はモチベーションになりますし、料金を上げたら中途半端な施術はできませんからね。
毎日緊張感を持って患者さんに向き合います。
結果、クライアントにも自分にもwin-winになる。
これが自費施術の醍醐味であると思っています。
最後に、何度も何度もなーんども同じことで申し訳ないのですが、僕の考えは、指圧師は保険内も自費もどちらもできなきゃダメです。
頑張りましょうね。僕もがむばる。
ではまた。