メディカリゼーション(医療化)について
マイナスなメディカリゼーション
「あなたの背骨は歪んでいます」
もしかしたら指圧や整体等の施術を受けたことのある方なら、施術者から言われたことがあるかもしれません。
雑誌やテレビ等のメディアでも、
「あなたの不調の原因は、"背骨の歪み"が原因かも!?」
なんてものもよく見られます。
でもこれ、場合によっては施術を受ける側にとってマイナスなメディカリゼーションになってませんか?って思うんです。
体調に不具合がある人が施術を受けに行く。
施術者から
「あなたの不調の原因は〇〇です」
「ですので、〇〇の施術をします」
これはインフォームドコンセントとしては、ものすごく正しい。
しかし、これが施術者のエゴを押し付ける形になってしまうと、お客さんにとってマイナスなメディカリゼーションになってしまう。
「私は〇〇が悪いんだ…」が過剰に反応して、その人が新しい症状、病気を作ってしまう危険性があるということです。
この問題は、"背骨の歪み"にとどまらず、"筋膜の癒着"だったり、"筋肉のこり"など様々な表現の仕方があります。
勘違いしないでいただきたいのは、"背骨の歪み"等の表現を否定しているわけではありません。
僕だってお客さんに説明する時に、そういった表現を使うことは多くあります。
僕が言いたいのは、お客さんにリピートしてもらいたいからという気持ちでのメディカリゼーションはやめません?ってことなんです。
法律の話
あん摩マッサージ指圧師の国家資格を持っている方であれば、「関係法規」という授業が専門学校であったはずです。
我々の業界の法律"あはき法"を勉強する授業です。しかし、この"あはき法"。正直グレイゾーンが結構多いんですよ。
なぜなら、皆さんがよく目にする、「肩こり」や「腰痛」の看板。本当は書いちゃダメなんです。
「ヘルニア専門」みたいな疾患名を広告に載せたり看板にしてもダメ。
「治ります」とか書いたり、言ったりしてもダメ。
(お客様の声的な感じで載せたりするのはオッケーという裏技は存在します)
あん摩マッサージ指圧師の免許がないと、"指圧"とか"マッサージ"というワードの使用もダメです。
これは、大前提として我々あん摩マッサージ指圧師は、国家資格なので、国が「ちゃんと勉強したからマッサージ、指圧をお客さんにしてもいいよ」と許可してくれていることが理由です。
しかし、言葉遊び的なもので、禁止ワードを使わなきゃいいんでしょなんつって、いわゆる"無資格者"といわれる国家資格を持たない方々が、僕たちと同様に営業できてしまっているなんだかおかしな業界でもあります。
是非、この話を読んでから最寄りの駅前の看板を見て欲しいんです。ある程度の現実がわかります。
それだけでなく、最近僕が気になるのは、過剰な広告が非常に多くなっているということ。
先述した"背骨の歪み"から始まり、骨盤矯正だったり筋膜リリース、肩甲骨はがし…。
全てを否定するわけではありませんが、ほんとそれ?的なものも横行してきている印象です。
例えば、ホームページやSNSを見てみても、いかに自分が優れた治療家なのか、他の治療家より何が長けているのか。を惜しげもなく記載してあります。
「どこに行っても治らなかった痛み、ご相談ください!」
などのアピールに始まり(いったい何を基準に言っているのかはわかりませんが…)
「施術した人数延べ1万人!」のような経験豊富だよ的な看板。(ほんとに数えたんですかね?)
このように、自分の経験だけで自信を持ってしまうのは、非常に危険だと思うんです。
そして、これらの広告スタイルが、マイナスなメディカリゼーションの原因なのではないでしょうか。
僕は、この繰り返しが、お客さんを惑わし、結果的に我々から離れていってしまう大きな原因だと考えています。
セミナーでの言葉
数年前にある腰痛のセミナーに行った時に、こんな言葉を聞きました。
「あなたの施術は、お客さんの自然治癒を邪魔していませんか?」
これは、非常にセンセーショナルでした。
僕は、15年以上自分の手技や経験を信じて、お客さんと向き合ってきました。しかし、
「今までやってきたことは、もしかしたら自分の治療家としてのエゴかもしれない」
そう思わされたんです。
もっと言えば、「治療のつもりで行っていたことが、その人の身体にとって必要としていないもの、逆に不必要なものなのかもしれない」ということ。
僕も気づかないうちにお客さんにマイナスなメディカリゼーションをしてしまっていたのかもしれません。
そもそも、人間の身体はまだまだわからないことだらけです。風邪を根本的に治す薬はありませんし、肩こりや腰痛の絶対的な治療法はありません。
我々の仕事は、お客さんの身体の不具合を改善させることです。例えれば、遠くに光る出口に向かって暗闇の中を進んでいくという表現がピッタリだと思います。
大事なことは、お客さんに不安を与えないために、正しい知識を持って、表現の工夫をすること。そして、自分の経験や知識だけに頼ってエゴを押し付けないように、指圧師は意識していかなければならないのではないでしょうか。
日々精進です。
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