指圧は医業?接客業?
【SHIATSU TALK #21 】
「もっと強く押してください」
指圧師なら一度はお客さんに言われたことがあるのではないでしょうか。
そんな時、皆さんならどうしますか?
「強く押せばいいじゃない」
そう思われる方もいるでしょう。
指圧師ではない方は、少しイメージしづらいとは思いますが、これは結構僕らの"あるある"だったりします。
我々の母校である、日本指圧専門学校卒の方であれば、◯田先生の
「痛いのはダメですよ〜」
「強く押したらダメですよ〜」
というお言葉が、脳内リフレインするはずです。
そう。指圧は強く押してはいけないのです。
もちろん、学校でもそのように教わります。
(なぜ強く押してはダメなのかは割愛しますが、身体にとってよくない刺激だからと思っていてください)
では、卒業後、現場で働くとどうでしょうか。
僕は常に理想論ではなくリアルをお話ししたいと思っています。
今回のnoteは冒頭の「もっと強く押してください」がキーポイント。
僕は、この言葉への対応で、指圧師として成長できるかどうか、もっと言うと食べていけるかどうかが変わってくると思うんです。
では、いってみましょう。
医業と接客業
我々のnoteやblogを見てくださっている方であれば、毎回同じ話をしてしまい恐縮なんですが、SHIATSUCAMPでは、"指圧は医療である"と何度もお話ししてきました。
ここでひとつ考えていただきたいのです。
指圧が医療であるならば、冒頭の「もっと強く押してください」というお客さんからの言葉に対して、なんと答えることが正解なのでしょうか。
わかりやすく例えるならば、お医者さん。
お医者さんに薬を処方されて、「もっと飲みたいから量を多くしてください」と伝えて、その通りに対応してくれる先生がいるでしょうか。
答えはNOですよね。
なぜなら、お医者さんは医業であり、接客業ではないからです。
では、指圧師の場合はどうでしょうか。
この場合の模範解答は、
「身体に悪影響ですので、強くは押せません」
ですよね。しかし、現場はリアルですので、その強い刺激をお断りしたお客さんは、再度あなたの施術を受けにきてくれるでしょうか?
かなりNOに近いと思います。
勿論、説明のスキルにもよりますけどね。
逆に考えてみましょう。
お客さんの要望に対して全て従い、ゴリゴリ強く押したとします。お客さんは満足してくれるでしょう。でも、身体には悪影響なわけです。
例えるならば、アパレルの店員さん。
もし、あなたが自分に思いっきり似合わない洋服を検討していても、かなり気心の知れた間柄でない限り「似合わないので、買わない方がいいですよ」とは言わないはずです。
なぜなら、この場合、店員さんの性格が悪いのではなくて、あくまでもアパレル店員さんは接客業ですので、目的は"お客さんを気持ちよく帰すこと"なんです。僕は結構この感覚に似てるのかなぁと思っています。
医業はお医者さんで、接客業はアパレル店員。少し極端な例えになってしまいましたが、あなたは指圧師としてどっちになりたいですか?
理想と現実
医者とアパレル店員どっちになりたいか?の質問に対して、「んなもんアパレル店員になりたいわけねーだろ」と指圧師からの怒号が飛んできそうですが、一旦落ち着きましょう。
ここで、先に結論からお話ししておきますね。
僕の考えは、強く押すこともできなきゃダメです。
なぜなら、リアルな現場では、接客業的な感覚もないと、お客さんは満足させることはできないと思っています。
我々は、お金という対価をいただいて施術をしている以上、お客さんが満足をして帰っていただかなくてはなりません。
ここでいう"満足"の定義は色々あると思います。
でも、強押しはダメという理想論だけでは確実に食べていけないのもまた事実なのです。
今回のnote、"強押しは悪"的な話だと思ったでしょ?でも、僕の考えはちょっと違うんです。
正直、強押しは悪ですって声高にSNSで発信している人で、売れっ子治療院を経営している人をみたことがないんですよ。
じゃあ逆に、お客さんの言いなり(言い方悪いけど)
で施術すればいいのか?と言われそうですが、それも違います。要はバランスなんです。
このケースの場合、強く押さないと満足してくれないという現実に、強押しはダメだという理想が対立しています。
ですので、弱く押してお客さんを満足させることが理想中の理想。
要は「似合わないですよ」と言えるアパレル店員になろうということです。わかりにくいですかね笑
でも僕ら指圧師は、それを目指せるんです。
理想を現実にさせる唯一の方法
我々が、そんな"攻めた接客業"になるにはどうすればいいのでしょうか。
僕が考える唯一の方法は、お客さんとの信頼関係を作るしかないと思っています。
信頼関係を作るのに一番大事なものはなんだと思いますか?それは"時間"です。
今日初めて会った人を信頼することはかなり難しいですからね。ですので、一人のお客さんと長くお付き合いすることが必要となります。
最初の話に戻ります。
もし、あなたが理想を追い求めて、「強く押せません」と断れば、そのお客さんの2度目はないかもしれません。
逆に言う通りに対応し、満足して帰ってもらえたとします。
その人は、またあなたの施術を受けにきてくれるかもしれません。それを繰り返せば、その人とあなたは長いお付き合いとなります。
ここでお互いを理解し合う"時間"が発生するわけです。
しかし、指圧は医療です。
強押しを続けて、お客さんをリピートさせることは、医療ではありません。
このタイミングで大事なことは、"接客業な視点"。リアルな考え方を持つこと。
例えば、最初はお客さんの希望通りの施術をして、柔軟な対応を見せておく。
その後、何回かに分けて、強押しがどうしてダメなのか?どういった施術がその方にとって最適であるか?をわかりやすく説明する。
(その時に少しずつ押す強さを弱めていく技術が必要だったりします)
お客さんが頭で施術を理解していただければ、不思議と弱く押しても効果が出ていくものです。
この時の"頭で施術を理解する"または"させる"ことがとても重要で、これが、あるないでは、効果に雲泥の差が見られます。
僕は、お客さんに頭と身体で施術を理解してもらって初めて信頼を勝ち取れるのだと思っています。
そして、先述した通り、信頼を得るには時間がかかるわけです。
ここで、多くの方々が陥る失敗例は、お店を始めた最初から理想に向かって突き進んで、現実的なお客さんのニーズに沿うことができないという事例です。
やはり、時間を使っていかないと理想には届いていかないと思うんです。
ですので、時間をしっかり使えるための体力(お金や環境)をしっかり持つことが重要です。
個人的に、準備不足だなぁと感じてしまう方々も多く見受けられます。
そのような段階を踏みながら、少しずつ信頼を得ていく。要は、医業と接客業のバランスを保ちながら指圧をしていくことが大事なんです。
「この人が言うんだから間違い無いだろう」
こう思われたら、そのお客さんはあなたの顧客です。是非、信頼を勝ち取れる指圧師になりましょう。僕も毎日サバイブしています。