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指圧師のセンスを考える

【SHIATSU TALK #19】

「あいつはセンスがいいよねー」
「このお店はいいセンスしてるなー」
普段から口にしている"センス"という言葉。
この"センス"を褒めてもらうと嬉しいものです。
特に自営業の方々は、この感覚がとても大事なのではないでしょうか。

果たして僕はセンスがいいのか?

なんてことを、常日頃考えているわけですが、
今回は皆さんと”センス”について考えたいと思います。

センスを定義する

さて、皆さんが思うセンスとはなんでしょうか?
一番最初に思い浮かぶのは、ファッションセンスやインテリアのそれではないかと思います。

同じ洋服を着ていても、
「なんかあの人が着るとカッコよく見えるんだよなー」なんてことはよくある話。

それと同じように、仕事にもセンスというものが必ず関係しますよね。日々の業務を効率よくこなすには、センスが必要になると思いますし、営業の成績にもセンスが大きく関係するのではないでしょうか。

そして、我々のような技術職も勿論、センスが超大事。いや、他の職種よりも必要とするかもしれません。

さて、先日読んだ本にこんなことが書いてありました。

センスとは"数値化できない事象の良し悪しを判断し、最適化すること"

"センスは知識からはじまる" より

この言葉は僕の中で、かなりセンセーショナルでした。今までモヤモヤしていた部分というか、敢えて向き合ってこなかったことに対して、短い言葉でまとめてくれていたんです。

そして、この言葉が”指圧師のセンス”ということに関して、考えるきっかけにもなりました。

このセンス問題。
例えるならば、日本で一番売れている服は数値で判断できても、自分に似合う服は数値で判断できませんよね。

では、このことを僕らの業界に置き換えるとどうなるでしょうか。

指圧師のセンスと課題点

まずは、良い悪いは抜きにして、指圧師がどのようなセンスで仕事をしているかを考えたいと思います。

僕の考える、指圧師ってこうだよね。的なセンスは以下の3つ。

①親指への愛
基本的に指圧というものは、親指で行います。
昔は「親指を育てる」なんて言い方をしたそうですが、指圧師の親指に対するリスペクトは相当なものです。ですから、親指は指圧師の命。

あまりにも有名ですが、指圧の創始者である浪越徳治郎先生の両親指を前に突き出してはっはっはと笑う決めポーズは、今でも指圧のアイコンとなっています。

偉そうな言い方になってしまいますが、僕は、このポーズを日本に浸透させたことが"センス"なんだと思うんです。
「指圧の心母心、押せば命の泉わく」
なんて本当にパンチラインだと思います。ある意味ラッパーですよ徳治郎先生は。ある程度の年齢の方ならみーんな知ってますから。

我々30代で例えるならば、「俺は東京生まれヒップホップ育ち」くらい有名なのではないでしょうか。
いや、本当に。

しかし、逆を言えば、いまだに徳治郎先生のセンスを超える指圧師が出てきていないということが問題点なのかもしれません。

"過去の栄光、すがる傾向"になっているのが今の指圧業界な気がしています。

②医療人(国家資格者)としてのプライド
我々は色々な場所で「指圧は国家資格である」と皆さんにお伝えしてきました。解釈の仕方は様々ですが、僕は指圧は医療であり、指圧師は医療人だと思っています。

現実に専門学校も、医療人を育てる教育をしています。ですから、学校を卒業する頃にはある程度のプライドが出来上がっているんです。
このプライド。持つことはもちろん大事ですが、場合によっては成長を邪魔してしまいます。

「先生」

患者さんたちの多くは、我々のことをそう呼んでくれます。
とてもありがたいことですし、それに報いるサービスをしなければいけないと思っています。
しかし、その影響からか、職場の同僚同士も先生と呼び合う治療院が多く見られます。

僕は、ここに我々の業界の諸悪の根源があると思っているんです。
先生なんて呼び合ったら、お互いにどこか偉そうになってリスペクトがなくなってきますし、サービスや施術スキルの低下に繋がると考えているからです。

医療人としての自分をセルフプロデュースするという点がセンスの見せ所なのかなと思っています。

③自己啓発好き
これは我々の業界だけではないと思いますが、感謝感謝言っている人が多すぎる印象です。

感謝は心の中でするもので、SNSで発信するものではないと思うんですよ。

ただ、自己啓発系にハマる構図は理解しているつもりです。僕もハマった時期がありますから。

仕事…特に自営なんてしていると、迷うことや不安が常にあります。自己啓発ってこのネガティブマインドに対して、脳の興奮物質を出させて、根拠のない"大丈夫"を出現させます。

もし、あなたが仕事で何か成し遂げようとしているとして、この興奮物質の調整方法というのを覚えておいて損はないと思います。
やはり、仕事には"アツさ"と言われる熱量がないとうまくはいかないと思うからです。

ですので、僕は自己啓発全てを否定するわけではありません。お薬で言うならば、痛み止めや睡眠導入剤のように、適材適所で使用することが大事で、そのタイミングがその人のセンスなのではないかと思います。

僕が考えるセンスのいい指圧師

今回も偉そうに言いたいことを言わせていただいていますが、じゃあお前が考えるセンスってどんなんだよ?と、声が聞こえてきそうなので、僕が考える"センスがいい指圧師"についてお話ししたいと思います。

今まで様々な同業の方々にお会いしてきて、「センスいいなー」と思った方の特徴は以下の4つでした。

①自分の弱みと強みを理解している
これは先述した"セルフプロデュース"に関係してくると思いますが、自分をセンスよく見せるためには弱みと強みを理解し、強みを活かして発信していくことが重要なのだと思います。
今となってはよく見られるようになりましたが、15年ほど前に"腰痛専門"や"五十肩専門"の治療院が出てきたときにセンスいいなーなんて思ったことを記憶しています。
一見、患者さんを限定してしまっているじゃないかと思われがちですが、自分の得意を活かすことは、とても頭の良いやり方です。

②自分の限界を知っている
「ガンが治せます」
稀にですが、この類の同業の方を見かけることがあります。ほとんどの方は、「んなわけあるか」と思われるでしょうが、本人は至って真面目なことが多いんですよ。どうやらいわゆる代替医療の勉強をしすぎた人にこういう症状が出やすいのだと理解しています。実際、僕の周りにもいますしね。
もちろん、自分の治療理論を持つことは大事ですが、やはり、モノには限界というものがあって、それを心得て行動しないと、あまりセンスがいいとは言えません。
逆に、「自分の治療で、この症状は対応できるが、これは範囲外だから専門医を紹介します」と言える人がセンスのいい指圧師だと思っています。

③自分の好きなこと、ものを理解している
僕は定期的に指圧を受けにいきます。知り合いのところに行く事が多いですが、気になるところは普通に予約して受けにいきます。
何のお店もそうですが、特に個人店はお店の内装を見ると、ある程度その人のアイデンティティがわかりますよね。
「あー和風な感じのイメージなのかな」とか「極力内装はシンプルにして腕で勝負なのかな」とか、なんとなくですが、どんな施術内容かも見えてきたりするんです。いろいろなスタイルがあって当然だし、正解なんてないと思っていますが、唯一感じることは、指圧が上手な人のお店は、全てに統一感があるという点です。

"照明はアジアンなのに畳で施術"みたいな思想がバラバラの治療院に上手な人は見たことがないんです。決しておしゃれにしろと言っているのではありません。

僕の知り合いで、内装は殺風景でベッドと解剖学書しか置いてないお店を知っていますが、とてもクールだと感じます。これもセンスです。

④リスペクトがある
僕はリスペクトする相手は、人と仕事の2つだと考えています。
当たり前ですが、人に対してリスペクトを持って接する事ができなければ、魅力的な人ではないと思いますし、仕事に対してリスペクト…自分の仕事が好きで、敬意を持って生きている人は自然とセンスが良く見えてくるような気がしています。
指圧師の話だけでなく、少なくとも僕の周りのセンスがいい人は、この2つをみなさん持っている。


センスをアップするには

読んだ本にはこんなことも書いてありました。

”センスとは知識の集積である”

センスは知識からはじまる より

例えば、「あいうえお」しか知らない人と「あ」から「ん」まで五十音を知っている人とでは、どちらがわかりやすい文章を書けるでしょうか。
言わずもがなですよね。

この話はそのまま我々にも引用できると思うんです。

例えば、技術面。
基本的な施術では良くならない症状を改善するためには、知識と知識の擦り合わせによるアプローチが必要となります。

「西洋医学では〇〇だけど、東洋医学では〇〇なことも考えられるな」
とか
「指圧で良くならなそうだから、骨格矯正をするか」
など、多角的に施術を考えることによって、アプローチの方法や角度が変わってきます。

まだ色々な手技や知識を身につけていなかったとしても、圧の強弱や方向を考えるだけで、アプローチ方法は変わります。

でも、ここまでは皆さんもなんとなくわかりますよね?

"勉強しましょう"ってことです。

では、先述した指圧師3つのセンスをアップするためにはどうすれば良いのでしょうか。

僕は、一つ解決策を見つけました。
それは、知識としての"culture"を知るということ。
以前もnoteでお伝えしていますが、"culture"とは、文化であり教養。

これからの指圧師は、医学やテクニックの知識だけでなく、"culture"的な側面が必要になってくると思います。それは歴史かもしれませんし、音楽かもしれない。僕は指圧×〇〇の可能性は無限にあると思っているんです。

要は想像とK.U.F.U(工夫)。
ライムスターを聴きましょう。


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