人々の言葉 -河原理子さんとフランクル-
『フランクル「夜と霧」への旅』を著した、ジャーナリストの河原理子さんの講演会に行ったことがある。話のあと、勇気を出して彼女に話しかけ、短い時間だが話をすることが出来た。
「フランクルの言葉が好きですが、僕はまだ彼ほどの苦悩を知りません。だから彼の言葉を心底からは理解できていない気がするんです」
僕がそう言うと、河原さんは次のように応じてくれた。
「自分の人生の意味(ロゴス)を知る瞬間は誰にもひとしく訪れる、という意味のことをフランクルは言っています。君にもいつか訪れるのかもしれません。それまでは大切なことを沢山溜めておくといいですよ」
時々、病にも掛からず、戦争もなく、貧困に苦しんでいるわけでもない自分があまりに恵まれていることに一種のうしろめたさを覚える。その時この言葉を思い出す。
自分の人生はまだ始まってさえいないかもしれない。
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