アイデン&ティティを40を超えて見返して気づくこと
自分が丁度盛り上がりはじめた世代に当たっているということもあってか、私は脚本家としての宮藤官九郎の作品が非常に好きでいろいろな作品を見てきた。
https://www.amazon.co.jp/アイデン-ティティ-DVD-峯田和伸/dp/B00016ZLIE
2003年位の作品かと思うのだけど、その中でも特にアイデン&ティティーという映画は、自分の観た全ての映画の中でも最も共感できたと言えるくらいの作品で、たまに見返したくなることもあってちょっと前にアマゾンか何かで投げ売りのようにされていた安いDVDを買って家に置いていて、たまに引っ張り出して見返したりしている。
この作品は峯田和伸扮する主人公が、バンドロックミュージシャンとして世間の様々な葛藤と戦いながら自分の理想の音楽表現を求めていくという青春ドラマで、その中にヒロインとして麻生久美子が出演している。
彼女は今でも美しい方だが、このときのこの映画の麻生久美子は信じられないくらい綺麗な人という印象を与える存在で、その綺麗さが故に逆に現実離れした存在としても演出されているとも感じた。けれど当時僕はまだ20代そこそこで主人公とまさに距離を同じく感じるような年代で、麻生久美子演じるヒロインのような、「自分の理想とすべき道を諭してくれるような女の人の存在」に憧れを抱くような気持ちも感じていた。つまりヒロインのそれを私自身が求めていたのである。
先日またちょっと気が向いてこの映画のDVDを取り出して見返した。もう僕は40を超えたおっさんなわけだけど、その時見返して初めて彼女の存在は外部化した自分自身の存在のように自然に感じることができたのだ。つまり自分を導いてくれるのは、自分の内側から湧き上がる自分自身の理想を目指す声そのものだったということに初めて気づいたのだ。そしてもういいおっさんになった僕は、そういった声は外側から誰かに言ってもらうのではなくて、自分の中にある理想を引き出し、自分自身で消化していかねばならないという気持ちになれたのだ。
このことは今となっては当然のように思えるけれど、若い時はそういった自分の弱さのようなものを誰か他人に救ってもらいたいような気持ちになりがちであるのだと思う。けれどもそうした周りの支えを手に入れ、活かすためにも、自分自身で自分の理想を消化できるようになる、つまり早い話が、「自立しなければならないのだ」と思う。

作品を好む人間は概して作品のメッセージを必要以上に深読みしがちだと思うけれど、この作品はそういった事に思いを至るようなおっさんたちによって作られたものと思われるので、僕が年齢を経て気づいた事は物語の中に最初からちゃんと内包されているのではないかと今の自分は思っている。
動画も見て欲しいですが、映画を是非見てください。