No.11 時空を超える光と水の旅 Ⅱ Ψ 呪術師の教え カンダ・ウンパット
『ナム "RNAM"』の物語を書いている最中は、バリ島のあのグヌン・カウィ辺りとどこか糸で繋がっているような感覚がありました。
また知りたいと思う情報はどこからともなくやって来るという、笑っちゃうくらい都合の良いシンクロニシティの連続の毎日で、何が不思議で何が不思議じゃないのかが良く分からないような日常になっていました。
そうして物語をちょうど書き終えた頃のある日、バリ島の情報に詳しい友人から、紙の束が入った封筒がドサッと届いたのです。私の書いた物語について何かの参考になればと、メモが付いていました。
それは文化人類学者の中沢新一氏の著書『虹の理論』の中の "ファルマコスの島" という部分を図書館でコピーを取ってくれたものでした。
バリ島の呪術師の元での修行の様子を描いた興味深い内容で、呪術師どうしの命懸けの空中戦から始まる冒頭から思わず惹き込まれました。
読み進めていくと、バリ島の古文書『ロンタル』に記された呪術についての解説が続き、そこに "カンダ・ウンパット・ブタ kanda enpat Bhuta" という聞き慣れない言葉が出てきました。
それはバリ島の古代アニミズムの教えの中に登場する "生命の芯 ルガ・プラーナ" を守っている4人兄弟のことで、ウンパットは数字の4を表しています。
この宇宙のいたる所を貫き埋め尽くしている一元論的力の場である"ブタ Bhuta 空間" の中で、人は "生命の芯" と、4人の守護神 "カンダ・ウンパット" に囲まれた5大元素の結合体として存在している、というようなことが詳しく説明されていました。
そしてこの "カンダ・ウンパット・ブタ" という考えは、呪術師たちの世界観にとって、何よりも重要な働きをするものとして捉えられているということでした。
いやぁ、長年バリ島には往き来していましたが、こんな言葉はその時初めて知りました!
生命の芯を守る4人の守護神と言えば、日本の古神道で言う "一霊四魂" にも通じる気がします。
それに陰陽師が自分の分身として式神を飛ばして戦ったりするところも、バリ島の呪術師たちに似ていますね。
さらに読み進むと、"カンダ・ウンパット" の4兄弟は、人間が生まれて成長していく段階ごとに名前が変化する、と書かれていて、そのうちの子供時代の4つの神様の名前を見るなり、
えぇーっ?!
私の目は釘付けになってしまいました!!
4人は東西南北4方位に位置し、「東西」と「南北」の2組の対として、名前がそれとなく似ているのですが、その2組の名前と、物語『ナム"RNAM"』の主人公2人の少年のそれぞれの名前とが、めっちゃくちゃ似ていたのです!
この物語の舞台はバリ島と思しき美しい南の島なのですが、なぜか主人公の少年の名前は、ぜんぜんバリ人ぽくなくて、妙な名前だなぁとは思っていたのですが、まさか人間じゃなくて神様の名前に由来していたとは・・・
ひゃぁー、びっくりしました。
『虹の理論』の中に載っていた "カンダ・ウンパット・ブタ" を表す「胎生学=生体システム理論」と題されたバリ島の呪術師による宇宙観を表す立体的な図面が、こちらです。
この立体図を見て、バリの古代アニミズムと、ナムの言う時空の仕組みと、そして物語に散りばめられたシンボルとが、私の中で見事に符号して、ピシッと繋がり、物凄〜〜く腑に落ちたのでした。
あぁ、そういうことだったのかぁ!!
けれど、実は私はこの時点では、この立体図の中に、ナムからのもう一つの重要なメッセージが託されていたとは、まだ気付いていなかったのです。
驚きは、まだまだ終わりそうにありません。
でも、これは別のお話なので、またの機会にしておきます。
あ、そうそう、それとあともう一つだけ、
私がナムに出会うよりもっともっとずっと前から、わけも分からずひたすら描いてきた絵の数々、・・・なぜそれほど鮮明な光景が突然脳裏に浮かぶのか、長年の謎だったわけですが、それがまるでこの本の挿絵のために準備したとしか思えないほどピッタリと何枚も当てはまってしまったのです!
私はこの物語を未来で書くことになると、自分の中のどこかで知っていたのでしょうか?
ナムには本当に驚かされます。
もう何が不思議で何が不思議じゃないのか、まったくわけが分かりません!(笑)
これもすべて自分自身でやっているのだと、ナムはきっと言うのでしょうね。
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木倶知のりこ 著書:●絵本『小箱のなかのビッグバン』 *・* ・*●『ナム "RNAM" 時空を超える光と水の旅』