少女
ディズニーランドに行っている。
車の助手席に座っている。
コンビニでグミを買っている。
LUSHの入浴剤を入れたお風呂に入っている。
全部ママには内緒。
私自身が、私の秘密。
いけないことをしているような気分。
楽しくて、悪いことじゃなくて、でもなんとなく謝りたくなる、気分。
ある時、私は、私という人間は、ひとりなんだなとおもう。
いくらママに愛されたって
学校に呼び出されたあの日の帰り道、そのままでいいよって言ってもらえなくたって
リストカットがバレて、もう二度としないでって声を荒げられたって
いくら夫と一緒にいたって
ただ泣くことしかできない私の背中をずっとさすってもらったって
手を繋いで歩く朝の帰り道だって
絶対に誰かにはなれなくて
ひとつにはなれなくて
それでも誰かを抱きしめようと信じている。
私は私だ。
私は私で、ひとつだ。
私は、可愛いに近づこうとした。
可愛くいれば、誰にも攻撃されないと思った。
可愛くいれば、自分を好きになれると思っていた。
でも、私の可愛いは、どうでもいい人に利用されて終わった。
ネットで知り合った人と体の関係をもった17歳。
職場でのセクハラに殺された20歳。
逃げたかった。
私を体の一部にしようとするものすべてから。
救いたかった。
自分を傷つけながらでしか生きられない、私のようなひとを。
役者を名乗った。
舞台に出演した。
私の気持ちを、どうにか体現しようとした。
保健室の先生になろうとした。
私を刺した言葉すべてを、どうにか武器にしたかった。
無駄にしたくなかった。
大学に行って、心理学を学んで、教員免許を取ろうとした。
でも無理だった。
私はまだ、少女だったから。
誰にも救われていない、少女だったから。
私は知らなかった。
私を殺した誰かを、殺す勇気を。
私は知らなかった。
私の救い方を。誰かの救い方を。
もし、私を誰かにあげられるならば。
私は、私を、誰かを、救うことができるかもしれない。
私のナイフを使うことができるかもしれない。
私には、いつも、言葉がいた。
辛い時、私は文章を書いた。
何かが変わる時、その勇気がない時、私は言葉を紡いだ。
私の裸のグロい気持ちを、焦げるような眩しい身を、表現できるもの
今もこうして、信じて、言葉を綴っている。
私の決意を、救うと決めた決意を、信じて。
私は、永遠に少女だ。
何度も殺されて、言葉のナイフを握らされて、誰も刺せずに、立ち続けた
私自身に、やっと救えてもらえた、少女だ。
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